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長編

潮鳴様

匿名 2時間前
怖い 20
怖くない 28
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、人でも、神でもない。 ただ、そこに“在る”。 「……おまえは しっていた」 「むかしも ここに いた」 「だから おぼえている」 「だから しずんで」 佐原は、名を呼んだ。 呼んだ覚えはないのに、呼び方を知っていた。 「シオナリ様」と。 すると、白いそれがゆっくりと近づいてきた。 足はない。動いていない。 けれど、確実に距離が詰まってくる。 声にならない波が響く。 「……ようやく きてくれた」 「もう さみしくない」 「もっと きて……ねえ……」 その時、佐原の意識が深く沈んだ。 水でも闇でもない。 ただ、“懐かしさ”のかたまりのようなものに、身を預ける感覚。 ――彼は、神に近づいていた。 ――彼は、神に“思い出されて”いた。 そしてその日、豊橋市南部でもう一人の行方不明者が出た。 年配の釣り客。遺留品は砂浜に残った長靴のみ。 それを聞いた佐原は、何も言わなかった。 ただ、海の方を向いて、静かにまぶたを閉じた。 波が鳴っていた。 ――シオナリ様が、また呼んでいる。 夜明け前。 空と海の境がわからない時間。 佐原敬一はひとり、森の奥へと入っていった。 風はなかった。 鳥の声もない。 ただ、自分の足音だけが、木々に押し戻されるように、重く響いた。 あの祠は変わらずそこにあった。 朽ちたまま、沈黙を守っている。 だが、佐原にはわかっていた。 ここが終点だ。 潮の匂いはない。 けれど、鼻の奥に塩が刺さる。 皮膚がぴりつく。 耳の奥で、“あの波”が鳴っている。 祠の奥には白い何かが、今日も“在る”。 彼は静かに膝をついた。 そこに祈る気持ちはなかった。 ただ、認めるためだった。 自分は“知っていた”。 かつて、ここに来た。 あるいは、この神に“選ばれた”ことがあった。 「なぜ わすれたの」 「なぜ うみを でたの」 「わたしは ここにいたのに」 「いつも よんでいたのに」 その声は、女のようにも、老いたもののようにも、風のようにも聞こえた。 けれどどれでもない。 それは、神の“感情”だった。 「さみしいの」 「わたしを みて」 「あなたを しってる」 「だから はいりなさい」 「あなたも しずんで」 佐原は立ち上がった。 祠の奥へと、一歩踏み出す。 木の床は朽ち、足元が沈む。 だが、怖くはなかった。 ――ああ、そうか。 ここは“海”だった。 この森も、祠も、記憶も、

後日談:

  • 以前別の怪談サイトにも投稿した話です。

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