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長編

潮鳴様

匿名 7時間前
怖い 20
怖くない 28
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かった。 ⸻ 風はほとんどなく、砂は乾いていた。 日中でも人影はまばら。 波は低く、だが何かを孕んでいるように、重く滑らかに打ち寄せていた。 AとB――事件当日の目撃者に会うことはできた。 Aはどこか虚ろで、話しかけても返事が途切れがちだった。 Bの方がまだ冷静だったが、彼の語る内容は――地図にない森、潮の音、祠――あまりにも現実離れしていた。 だが、佐原は「ありえない」とは思わなかった。 民俗の現場において、信じがたい話ほど“本当のこと”に近い。 ⸻ Bの案内で、森とされる場所へ向かった。 不自然な小高い丘とその向こう。 確かに、そこには木々の影が連なっていた。 地図には何もない。航空写真にも何もない。 それでも、“ある”のだ。ここに。 佐原は木立に足を踏み入れた。 風が止む。 空気が変わる。 音が吸い込まれるように遠ざかる。 GPSは正確に動いていたが、彼の五感は確実に“ずれていた”。 そこに「祠」があった。 ⸻ それは、崩れかけた木造の小さな社だった。 扉はない。内部には何も祀られていない。 ただ、土間にいくつもの貝殻と、干からびた海藻のようなものが落ちていた。 「……これが海から来たっていうのか……?」 佐原は膝を折り、周囲を記録しながら、何か“視線”のようなものを感じた。 祠の奥。木の幹の間。 そこに白い何かが揺れていた。 風ではない。 光でもない。 だが、確かにそれは「そこにいた」。 その時――声がした。 「ここは うみのかわり」 「あなたのこと もう わすれてしまっているのに からだが おぼえているの」 「だから はいりなさい おまえも しずんで」 耳ではなかった。 頭の奥、もっと深いところ――血が流れる感覚そのものに、声が“届いた”。 佐原は思わず数歩、後ろへ下がっていた。 祠の奥は暗く、波のように何かが満ちていた。 だがそこには水はない。 地面は乾いている。 それでも、足元がじわりと沈んでいく感覚があった。 彼はそれ以上は進まなかった。 あるいは、進めなかった。 ⸻ 海に戻った時、空はもう茜色に傾いていた。 波は変わらず、静かだった。 だが、佐原の耳には、それが遠い太古の神の心音のように聞こえていた。 彼は報告書にこう記すしかなかった。 「地質的には異常なし。現地に祠の痕跡。海との関連性不明。 潮成(しおなり)神社跡との関係を今後調査。」 だが

後日談:

  • 以前別の怪談サイトにも投稿した話です。

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