
一人暮らしを始めたばかりの頃、私は冬の寒さに震えながら眠りについた。深夜、何かの気配を感じて目を覚ました。部屋の隅に立つ影が見えた。その影は徐々に明るみに出てきた。そこにいたのは、母だった。
彼女はナイフを手にし、私のベッドの横に立っていた。目は異常に光り、笑みを浮かべているが、その表情はどこか不気味だった。私は恐怖で動けずにいたが、彼女は「大事なものを切り取ってあげる」と言いながら、ナイフをこちらに向けてきた。
必死で声を上げようとしたが、声は出なかった。心臓が高鳴り、身体がこわばる。何とか意識を取り戻し、彼女の手を掴もうとしたが、彼女の力は想像以上に強かった。まるで何かに取り憑かれたかのように、彼女は私を押さえつけて離さなかった。
「やめて!」と叫びたかったが、声は出せなかった。彼女の手は冷たく、まるで氷のようだった。やっとの思いで彼女の手を振りほどき、ベッドから飛び出すと、部屋のドアを開けて逃げ出した。
翌朝、恐怖に怯えながらも母に電話をかけた。「昨夜、どうしてあんなことをしたの?」と問いただすと、彼女は何事もなかったかのように「ごめんね、夢でも見ていたのかもしれない」と平然と言った。その言葉に、また一層の恐怖を感じた。
それから数日間、同じ夢を繰り返すように、母の異様な姿が夜中に現れ、私を追い立てる。どんなに怒鳴っても、謝るだけで解決しない。次第に、私は自分の心が壊れていくのを感じた。母の呪縛から逃れるために、私は夜中、パジャマのままマンションを飛び出し、近くの24時間営業のコンビニで一晩過ごした。
その後、引越しを決意した。新しい場所で新たな生活を始め、ようやく穏やかな日々が戻ってきたが、時折思い出すのは、恐ろしい母の顔と、手にしたナイフの光だった。あれは夢だったのか、それとも本当に彼女の中の何かが目覚めていたのか。答えは今もわからない。何かが私たちを引き裂こうとしていたのかもしれない。
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