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長編

からくり箱

匿名 2021年8月16日
怖い 124
怖くない 111
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俺が小学生の頃の話。 俺には、年の離れた姉がいた。 当時、お袋は身籠っていて、腹の中には、俺の妹になるはずだった赤ん坊もいた。 家族構成は、親父とお袋(仮 妹)、姉、俺。 確か、夏だったと思う。 親父の実家、つまり祖母の家に盆か何かで帰省してたんだと思う。(記憶が曖昧でスマン) 祖母の家は、九州の山に囲まれた小さな村にあった。周りは山と田んぼばかりで、祖母の家の前には、小川の様な小さな川があった。 そんな場所だったから、遊ぶ場所なんか、小川でフナやドジョウを捕まえるか、山の入り口で、カブト虫やクワガタを捕まえたりする事しか出来なかった。 幸いにも村の何軒かの家には、俺と同じくらいの子供が居て、たまに遊びに来てたんで、一緒に山や小川に遊びに行ったりもしていた。 祖母の家には、倉が有り、裸電球を点けても薄暗い良く分からない物が所狭しと入っていた。 姉は、そんな薄暗い倉の中で色々な物を引っ張り出しては観察したり、変色したボロボロの本の様な物を読んだりして過ごしていた。 俺は、姉が平気で入り浸る倉が少し怖かった。 薄暗いっていうのもあるが、何となく薄気味悪さを感じていて、余り近付かなかった。 あれは確か、祖母の家に泊まって3日ぐらいした時だったか? 昼間、俺は、近所の幸太と山の入り口で、セミやカブト虫なんかを捕まえて遊んでいたと思う。 いつもは、山の入り口から奥には入らないのだが、途中から幸太の兄ちゃん(中学生)とその友達のAとBがやって来て、少し山の中に入った所に神社があり、その辺りには、大きなカブト虫やクワガタがいるから行こうと誘われた。 俺は、親父や祖母に子供たちだけで山の中に入る事はするなと良く言われてたから、最初のうちは断っていた。 しかし、そこは小学生。 幸太の兄ちゃんやAやBが話す内容に徐々に興味が湧いてきていた。それは幸太も同じ様子だった。兄ちゃん達が一緒なら大丈夫なんじゃないかと、悩む事数分で俺と幸太は二つ返事で山の中に幸太の兄ちゃん達と一緒に入った。 子供の足なので時間は曖昧だったが、大体、10分~15分くらい歩くと、小さな赤い鳥居が見え、その鳥居をくぐり暫く歩くとこじんまりとした社が見えて来た。 社の後ろには、今まで見てきたどの木より大きな巨木があった。 幸太の兄ちゃん達は、その巨木はこの神社の御神木でいたずらをするとバチがあたると教えてくれた。 なので、俺達は、御神木とは違う別の木を蹴ったり、登ったりして、カブト虫やクワガタを見付けては、その大きさに驚いたり、歓声を上げて喜んだりした。 遊び疲れて境内にある石の椅子みたいな所に座ったり、社の中を覗いたりして一頻り遊んだ後、俺達は帰った。 帰り際、社の中を覗いてた幸太は、社の中の祭壇?みたいな物の板の上に乗っていた鏡や小さな綺麗な装飾品がついた箱があるぞと俺に言われ、俺も中を覗きソレを見た。 姉が好きそうな箱だった。 もう少し良く見たくて、社の扉に手を掛けたが、幸太の兄ちゃん達に呼ばれて、俺達は、家に帰る事になった。 その帰り道。 幸太が、「明日また来て、あの社の中見てみようぜ。」と言ってきたので、俺もウンウンと頷いた。 山の入り口まで来ると辺りはもうすぐ夕暮れ時で空がオレンジ色に染められつつあった。 俺達は、色々な話をしながら歩き、祖母の家に着くと、「また明日。」と言って家の中に入ろうとした時、幸太の兄ちゃんに、「今日、山の中に入った事は内緒だぞ。」と言った。 俺は、笑顔で「うん。」と返事をして大きく手を振り家の中に入った。 夕飯を済ませ2階に上がると、姉が寝泊まりしてる部屋の前を通り掛かった。 俺は、社の中で見た装飾品がついた箱の事を姉に話したくなり、「姉ちゃん、ちょっと入ってもいい?」と襖越しに声を掛けると、部屋の中から「良いよ~。」と明るい姉の声がして俺は、襖を開けた。 そして俺は、先にお袋達には内緒だと言って、山の中にある神社の話と社の中にあったあの箱の話をした。 最初こそ、山の中に入った事を少し咎められたのだが、社の中の箱の話をしたら、興味津々な感じで目を輝かせてた。 翌日、俺が目を覚まし1階に降りると、祖母だけだった。「お父さん達は?」と聞くと「お父さん達は町へ買い物に行ったよ。」と、少しのんびりとした口調の返事が返って来た。 朝ごはんを食べる様に言われ、俺は、食卓についた。 姉の姿も無かったが、どうせいつもの様に倉にいるんだろうと思い、対して気にしなかった。 祖母特製の酸っぱい梅干しを少しかじって、ご飯を口の中に放り込んだ時、外から幸太が俺を呼ぶ声がした。 箸を置いて、縁側の窓を開けて、「ちょっと待ってて。」と言いお茶碗の中に味噌汁をぶち混んで、口の中に流し込み、酸っぱい梅干しも食べてから、祖母に「遊んでくる‼」と言って玄関で慌てながら靴を履き家を出た。 この時、後ろで祖母の声がしたが良く聞き取れないまま家を飛び出していた。 その祖母の声が何と言っていたのかは、幸太の話で納得した。 「明日は、あの神社で祭りがあるんだって。だから、祭りの準備を手伝うと言えば、子供たちだけでも山の中に自由に入れる。」と、少し興奮気味に言った。 「祭り?」俺は、そう聞き返してた。何回も祖母の家に来ていたが、祭りがあったという記憶は無かった。 「うん。良く分かんないんだけど、お父さんが朝、言ってた。」と幸太も首を傾げながら言った。 俺と幸太は、取り合えず山の入り口まで行ってみる事にした。 暫く寄り道をしながら歩いて、山の入り口付近まで来ると、大人達の姿が数人見えた。 それを見て幸太が「やっぱり祭りがあるみたいだな。」と嬉しそうに俺に言って来た。 けど、俺には、何か大人達が慌ててる様にも見えていた。それでも、あの社の中の箱が気になり、ゆっくりとした歩調で、大人達に近付いて行った。 声を掛ける前に、大人達数人に気付かれた。 そして「祭りの準備に来たのか?悪いが祭りは中止だ。だから、家に帰るか別の場所で遊びなさい。」と言われ俺と幸太はお互いの顔を見て首を傾げた。 「祭りは無いの?」と幸太。 「ああ。楽しみにしていたのに済まないな。」と俺は、知らないオジサンに言われた。 脇では「どうする?」「祭り云々より、今の状況をなんとかしないと…」「町まで行って神主呼んで来るか?」とか、なんかそんな話が聴こえて来た。 暫くその場に止まっていたけど、社の方の畔みたいな道からも小走りに走って来る人とかもいて、なんか忙しそうだと思ったのと、マズイ事が起きたのだろうと子供ながらに感じて、俺は、幸太に帰ろうと促した。 しかし、幸太は祭りの事を朝、家族に聞かされ楽しみにしていたせいか、直ぐに動こうとはしなかった。 内心、俺も初めての事で少し楽しみだった気持ちもあったが、大人達の慌て振りにそんな気も失せ掛けてた。 何度目かの俺の「帰ろう。」の言葉に幸太は軽く頷き俺達は山の入り口から離れた。 幸太は、ずっと頭を垂れたまま無言だった。 俺が何を話しても終止無言のまま、祖母の家に着いた時も「またな。」と声を掛けたが幸太は俯いたまま軽く頭を縦に動かすだけで、俺達は別れた。 家に着くと俺は、何となく倉が気になり、姉が居るであろう倉の方に足を向けた。 倉の扉は開いていて、中に姉が居ることは間違いなかった。 俺は、入り口からソッと中を覗いて見た。 薄暗い倉の中はヒンヤリとしていた。 裸電球の明かりに少し目が慣れて中の様子が分かる様になった頃、倉の入り口から姉に声を掛けた。 「姉ちゃん、居る?」そういうと、ゴソゴソと音がして、二階から姉が顔を出した。 「何?」短い返事が返って来た。 「なんか面白い物あるの?」俺は、そう聞いた。 「あんたには面白く無いかも知れないけど、私には、面白いよ。」と倉の中に姉の声が響いた。 「上がってっていい?」そう俺が言うと、姉は「上がりたいなら上がって来ればいいんじゃない?」と言った。 俺は、ヒンヤリとした倉の中に入り、少し埃っぽい倉の中の階段を登り、二階へと上がった。 姉は、何かを持っていてソレを開けようとしている最中だった。 「何やってんの?」俺が言いながら姉に近付くと、二階に唯一ある窓からの明かりで、姉の手元にある物が見えた。 「あっ !?」俺は、姉の手の中にあった箱を見て驚いた。それは、あの社の中にあった箱だった。 幸太の兄ちゃんが話してくれた巨木と社の話。神社の中は、神様の家みたいな場所だから、勝手に物を持ち出したらイケない事とバチがあたる(神様に怒られると当時は思ってた。)と聞かされていた事を思い出していた。 そして、突然の祭りと祭りの中止。 大人達の慌てた様子。 それが頭の中でパズルの様に完成しつつあった。 「姉ちゃん、それ…。」俺の声は、驚きと祭りを楽しみにしていた幸太の帰り際の様子の怒りとで震えていた。 いや、実の姉が神様の家から、物を盗んで来たと言った方がショックだったのかも知れない。 この時はまだ、そんな良く分からない感情をどう表現していいのか分からなく、姉の隣に立ちすくんでいた。 俺の感情を姉がどう受け止めたのかは分からないが…「あんたから昨夜聞いてさ、どうしても見たくなって、今朝早くに行って、持って来たのはいいんだけどさ~開かないのよね~。」と言って、引き出しの様な所を引っ張って見せた。 箱はカタッカタッと音がするだけで、引き出せない。ツマミの部分も指先でツマンで開けようとするがカチカチと音がするだけで、箱は何処も開かなかった。 箱を開けようと躍起になっている姉に俺は、あの神社で、祭りが明日あるって話だったけど、中止になった事と大人達が慌ただしくしていた事を話した。 すると姉は、手を止めて俺に、この箱の事誰にも言ったらダメだよ。もし誰かに話したら、姉ちゃんに会えなくなるからね。と言われた。 俺の頭の中には、誰にも話したらダメって事と姉がいなくなるって事がグルグルと回っていた。 暫く放心していると、倉の入り口からお袋の声がした。 「お姉ちゃん居るの?」 姉は、いつもと変わらない声で「居るよ~。」と言いながら二階から顔を出した。 「お団子買ってきたから、家においで。」そうお袋が言って少し咳き込んだ。 多分、倉の中が埃っぽいせいだろうと思っていた。「お団子だって。」と姉が俺に言った。 その時の姉の顔は、普段では見たことがないくらいの怖い顔をしていた。 俺は、少し後ずさってから、階段を降りようとしていた時、後ろから姉に腕を強く引っ張られた。驚いて後ろを振り向くと、姉は、怖い顔をしたまま目だけで「何も言うな。」と言ってた気がした。 俺は、小刻みに震える頭を無言のまま縦に振り、階段を降りた。 倉の入り口から少し離れた所でお袋が咳き込んでいた。 俺が倉から出てくるのをお袋が見て「あんたも居たの?珍しいわね。」とにこやかに笑った。 姉も倉から出てきて、3人で家に入った。 団子を頬張りながら、祖母とお袋、姉と俺で談笑 してると、親父が「ミ○○神社」( ○の部分は聞き取れなかったか覚えて無い。)の社の中の物が盗まれたらしい。」と言いながら居間に入って来た。 俺は、口に入れた団子を喉に詰まらせそうになり噎せた。姉は、平然としていた。 お袋は「慌てて食べるからよ。」と噎せた俺の背中を擦った。 噎せながら俺は、姉が泥棒になってしまったと悲しくなり、噎せて涙目になった時少しだけ泣いた。 お袋が、ティッシュペーパーを渡してくれたので口の回りと目を拭いた。 噎せたお陰か俺が密かに泣いた事は誰にも気付かれずにすんだ。 しかし、それからが大変だった。 村中で、神社に行った者探しが始まり、俺や幸太や幸太の兄ちゃん達と神社に行ってた事がバレて、大人達から物凄く怒られた。 そして、神社の物を持ち出したか?と同じ事をみんなに聞かれた。けど、俺も幸太も社の中を少し覗いただけで物は持ち帰って無いと言い、幸太の兄ちゃんやA、Bの証言もあり、どうにか信じて貰えた。 そうなると、外部からの人間じゃないのか?と話は拡がったが、小さな村だから、誰か知らない人が来たら、直ぐ噂になる。 そんな事は、俺が祖母の家に来てからは1度も無かった。 じゃあいったいなんだ?と村人達は頭を抱えていた。 親父にその無くなった物は何か聞こうとしたが教えてはくれなかった。 夕飯を済ませて2階に上がると姉の部屋の前で立ち止まった。 姉にあの箱を返した方が良いんじゃないなのか?と言おうか迷っていた。 迷っていたのは、午前中に見た姉の顔が怖かったからだ。 そんな事を思いながらボーッと突っ立っていたら「何やってんの?」と後ろから姉の声がした。 てっきり部屋に居ると思ってた俺は、ビックリして「ヒッ」と小さく呻いた。 姉は、俺の脇を通り抜け部屋に入って行った。 すれ違い様見た姉の手には、あの箱が握られていた。 俺は、咄嗟に姉の部屋に入って言った。 「それ返した方がいいよぅ。怒られるよ?お巡りさん来ちゃうよぅ?姉ちゃん捕まっちゃうよ?」と、、、しかし、姉は、大丈夫大丈夫と笑ってた。 何が大丈夫なのか正直俺には分からなかった。 そんな騒動から一夜明け。 村では、警察に連絡するしないの会議みたいなのがあり、祖母と親父は朝から居なかった。 お袋が俺を起こしに来て朝食を済ます様に言われた。なんだかお袋も緊張している感じだった。 姉は、朝食を済ませてまた倉に籠ってるとお袋が呆れた様に言ってた。 お袋が用意してくれた卵焼きを頬張っていると、親父が1度帰って来て、車に乗って何処かへ出掛けて行った。 俺は、何となく分かっていた。 親父はきっと町の警察署に行ったんだって…。 当然、倉の中に居る姉は、この事を知らないだろう。不安と良く分からない感情で押し潰されそうだった。今、お袋にあの箱の事を話したら、警察に姉が連れて行かれる事もないんじゃ無いか?とか、厳しく説教されるだけで終わるんじゃ無いか?とか色々思った。 台所で食器を洗うお袋の後ろ姿を眺めながら、そう思ってた。言って仕舞おう。言ってしまえば、この訳の分からない感情も消えて無くなるかも知れない。 そう思って、食べ終えた食器を抱え台所に行こうとして、ふと目の端に縁側の窓が視界に入った、そこに誰か居たような気がして、振り向いた。 姉がこちらを見ていた。 持っていた食器がガチャガチャと音を立てた。 姉の顔は、あの時倉で見た表情で少し睨み付ける様にも見えた。一気に恐怖感に襲われた俺は、重ねた食器をテーブルに置くと、一目散に2階の寝泊まりしていた自分の部屋に入った。 震えながら、カーテンの隙間から外を見ると姉は、倉の方へと歩いて行ってた。 続きます。 思ったより長くなってしまった。また時間ある時に書きます。

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