
中編
呪物
匿名 2016年11月29日
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これは私が祖母の家で体験したことです。
私の祖母の家は、築300年の古い家で子供ながらに少し不気味なところでした。決まって毎週土曜日に母が祖母の家に出向いていくのですが、私は余程のことがない限り行こうとはしませんでした。
そんなある日、母が昔お世話になった小学校の先生が亡くなられたということで、父が単身赴任で家にいなかった私は5日間だけ祖母の家に泊まることとなりました。最初は気が進まなかった私ですが、本来経験することのできない山での遊びや川釣りなどを楽しむ中で予想以上に祖母の家での暮らしを満喫していました。
しかし、祖母の家にきて3日目のこと、私は物置とされている部屋の中に二階に続く階段があることに気づきました。
私「あれ?こんなのあったかな?」
確かに祖母の家は外見からして二階建てだったのですが、特に興味のなかった私は詮索することをしませんでした。しかし、その二階への入り口が目の前にある。そうなるとやはり冒険心というものがくすぐられます。私は、二階に続く暗い階段を見上げ、1段目に足をかけました。
「ギィーーーー」
なんとも言えない不気味な音がして、一瞬戻ろうかと悩みましたが好奇心が勝り私はまた一歩、二歩と階段を登って行きました。上りきった先にあったのは、ただの空間でした。しかしその先には、掛け軸があり、その下には戸のついた木箱が置いてありました。私はその木箱の元に歩み寄りゆっくりと戸を開けました。
中に入っていたのは赤い色のマリのようなものでした。手に取りじっくり見ていた私は、そのものの異様さに気づき思わずマリを地面に落としてしまいました。そのマリの中には幾つもの爪が入っていて、マリ本体は血で染められているようでした。私はあまりの驚きと恐怖に身動きが取れずその場に座り込んでいました。しかし一刻も早くこの場をはなれなければいけない気がして私は立ち上がり階段の方へと体を向けました。その時でした、本当に私が体の向きを変えたと同時に一階の物置部屋のドアが開いたのです。戸を開けた主は階段の前に立つと二階へと続く階段を上り始めました。私がいる部屋には押入れは愚か窓すらなかったため私はどうすることもできませんでした。その間にもそいつは階段を確実に上がってきています。そしてそいつの姿が見えた時私は絶句しました。人間とはかけ離れたその生き物は、4足歩行で移動をし、目は真っ黒でした。おまけにそいつは私を見るや否や、眼球のない目を細めとても嬉しそうな顔をしながら、
「でれたでれたでれたでれたでれたでれたでれたでれたでれたでれたでれたでれたでれたでれたでれたでれたでれたでれたでれたでれたでれたでれたでれた」
と狂ったように叫びながら全速力で走ってきたのです。
その後のことは気絶したようで覚えていません。ですが、気づいたら私はベッドで寝ていて横には心配そうな顔をした母がいました。どうやら熱で二日間寝込んでいたようです。熱が下がった私はそのまま祖母の家を後にしそれ以来祖母の家には行っていません。
長文お疲れ様でした。
ここからは今回この話を書いたきっかけについて話します。私は先日祖父の三回忌で久しぶりに祖母の家を訪ねました。従兄弟や祖母との時間を楽しみながら、ふとあの小さい頃に体験したことを思い出しました。祖母と二人きりになった頃を見はからい、私はそのことを祖母に打ち明けました。その瞬間、祖母の顔が真っ青になりボロボロ泣きだす始末。家中大騒ぎで、お坊さんを呼ぶだの霊媒師を雇うだので大変なことになりました。しかしいざお坊さんが来ると皆口を揃えてこう言うんです。
「お気の毒ですが…」
その時初めて、私はことの重大さに気付かされました。どうやら私の開いた箱は、いわゆる呪物で先祖代々引き継がれてきたパンドラの箱みたいなものだったらしんです。昔この地方は疫病が絶えず、それを鎮めるために自らの血液を使っておった糸を使いそのマリのようなものを作っていたそうです。しかし元々村人の少なかったこの地域は、糸を染める血液を充分に集めることができず最終的には村の若い娘を人柱として生贄にしてきたみたいなんです。私が見た生き物はその呪物が具現化したもので、私にしがみついて離れないのだそうです。つまり助からない、祖母がそう教えてくれました。現在私は高校2年、お坊さんには持ってもあと1年と言われました。皆さんには好奇心だけで行動しないで欲しいと思っています。これが私からの最後のお願いです。
(以上、母代筆)
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