
数年前、友人から聞いたお話です。彼が働いていた廃墟の病院での出来事。彼の同僚、真理子さんが40代の時、当時付き合っていた慎司さんが経験したことです。
慎司さんは、昔から心に傷を抱えていた真理子さんにとって、癒しの存在でした。彼は明るく、誰にでも優しい性格で、真理子さんは彼との交際を心から楽しんでいました。しかし、付き合って1年が経った頃、慎司さんの様子が急に変わり始めました。
ある寒い冬の夜、真理子さんは廃墟の病院に向かいました。彼女は慎司さんの待つ部屋に入った瞬間、彼が奇妙な行動をしていることに気づきます。彼は壁に耳を当て、何かを聞こうとしているのです。隣の部屋に耳を澄ませたり、突然立ち上がっては部屋の隅で震えていました。
「どうしたの?大丈夫?」真理子さんが声をかけると、慎司さんは目を見開き、恐怖に満ちた声で言いました。「聞こえる…声が聞こえる…」彼はまるで壊れたおもちゃのように、同じ言葉を繰り返していました。
真理子さんは不安を感じながらも、彼が落ち着くことを願い、その場を離れました。しかし、二週間後、再び病院に行くと、慎司さんは不在でした。「どこかに出かけているのだろう」と考え、彼の帰りを待つことにしました。その矢先、玄関が大きく開き、慎司さんが飛び込んできました。
彼は真理子さんを無視し、部屋に上がり込むと、震えながら独り言を呟いていました。「来た、来た…あの声が…」そして、彼は手に持っていた古びた医療器具を握りしめ、玄関のドアをじっと見つめました。
真理子さんは恐怖に包まれ、動けなくなってしまいました。慎司さんは少しずつ冷静さを取り戻し、「今日は帰ってくれ」と告げました。彼女は心配ながらも恐怖心からその場を去りました。
帰り道、真理子さんは慎司さんの友人である光一さんのカフェに寄りました。そこで、彼女は慎司さんの異変を涙ながらに訴えました。光一さんは「慎司の変化には理由がある」と語り始めました。
「彼と私が中学生の頃、廃墟の病院に忍び込んで、古い医療器具を盗んでいたんだ。ある夜、声が聞こえて振り向くと、そこに見知らぬ老婆が立っていて、私たちを見ていました。」
その老婆が何を言ったのかを思い出そうとする光一さんは、急に声を潜めました。「慎司が、思い切りその老婆を突き飛ばしたんだ。彼女は何も言わずに倒れ込み、動かなくなった。私たちは恐れを抱きながら逃げたが、慎司はその後も何度も病院に行っていたらしい。」
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