
初めての一人暮らしを始めた大学生の僕は、冬の寒い夜、地下鉄を利用して帰宅する日々を過ごしていた。毎晩同じ時間に乗る地下鉄の車両には、いつも見かける中年の男性がいた。彼はいつも僕の方をじっと見つめていて、その視線が気になって仕方なかった。正直、彼の存在は気味が悪く、なるべく彼の目を避けるようにしていた。
そんなある晩、いつも通りの車両で彼が僕を見つめていることに気がついた。周囲は静まり返り、車両の中は誰もが自分の世界に浸っているようだった。しかし、彼の視線は明らかに僕に向けられている。その瞬間、妙な苛立ちを感じた僕は、思わず彼の視線に応えることにした。
30分の地下鉄の旅の間、彼の目を見続けることにしたが、心の中では不安が募るばかりだった。やがて、自分の降りる駅が近づいてきた。彼の横を通り過ぎる瞬間、ふと彼が囁くように言った。「見えるのか?」と。その言葉を聞いた瞬間、全身が凍りついた。彼の目はただの好奇心ではなく、何か異質なものを感じさせるものだった。
その晩以来、地下鉄に乗るのが恐怖に変わった。帰宅はいつもバスに切り替えたが、心のどこかであの男性の言葉が響き続けていた。あれは本当に人間だったのか?それとも何か別の存在だったのか。思い出すたびに背筋が寒くなる。僕の目の前に現れた「彼」の正体を、未だに理解できていないのだ。彼の視線は、今もどこかで僕を見つめている気がしてならない。
この恐怖は、ただの妄想なのか、それとも現実なのか。帰り道で感じるあの目線は、いつまでも消えないのだ。
彼の言葉が、今でも耳に残っている。「見えるのか?」
その問いは、僕の心に深く刻まれたままだ。何が見えるのか、そして何が見えているのか、未だに分からないまま、僕はバスに揺られている。
あの時の恐怖を思い出すと、今でも身の毛がよだつ思いがする。
それ以来、夜の帰り道は、ずっと不気味なものに変わってしまった。
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