本当にあった怖い話

怖い話の投稿サイト。自由に投稿やコメントができます。

長編

偽リナキ体験談

まなみ 2019年2月14日
怖い 430
怖くない 335
chat_bubble 1
18,845 views
 この話は、私、コオリノ本人が体験した話です。 思えばこの体験を期に、私は怪談というものに興味を持ち始めたのかもしれません。 初めに言っておきます。この話には霊などといった類はでてきません。多分……違うと思います。 偶然の産物。 私はそう思う事にしています。 それでは、お読みください。私が小学6年生の頃に体験した話を。 § 私はその日、H県K市にある戸畑商店街にいました。 目的は、その商店街の中にある本屋です。 程なくして本屋に着いた私は、目的の本を探す為、本棚の周りをグルグルと徘徊していました。 その本屋には、中に大きな四角形の柱がいくつかあって、四角形のそれぞれの面が、全面鏡張りになっていました。 私は本屋に入ると長居するたちでして、その日も何度も同じ場所をグルグル周りながら、目新しい本を物色していたんです。 やがて、ふと違和感を感じました。 それはあの柱にある鏡です。 見ると、そこには私が映っています。当たり前ですよね。が、もう一人、私の他に映っている人物が居ました。 これもまあ当たり前です。だって他に客がいるんですから。 でも私が感じた違和感はそこじゃありません。 さっきから、不意に視界に入るその鏡の中に、まったく同じ人物が、私の後ろにいたのです。 まるで、私の後をつけているかのように。 その人物は男でした。黒縁の眼鏡を掛け、頭部は少し禿げていたと思います。 水色の半袖姿で、小太りの男性。 年は30後半から40代といったところです。 ちなみにその時点で、私が本屋に入って既に2時間ほど立っていました。 私は何だかそれが面白くなり、わざと誘導してみようと考えました。 正直その時はまだ、本気でその男が、私をつけているなんて思っていなかったから。 私は直ぐに踵を返すと、婦人雑誌コーナーに向かいました。 男が読むようなものはもちろんありません。 本を物色する振りをして、私はふと、鏡を見ました。 いました、例の男が。 婦人雑誌コーナーに、私の後をついてくるようにして。 ドクドクと、血管の中の血が、物凄い勢いで流れるのを感じます。 高揚しているのか頭に血が上り、その場に居ても立っても居られず、私は本屋を飛び出しました。 早歩きで本屋を出ます。 そして頭の中であれは私の勘違いだと、何度も強く念じました。 アーケードの中をしばらく進むと、タイトーと書かれたゲームセンターの看板が、私の目に飛び込んできました。 衝動的に、私の足は店の中へと向かいました。 手前にあった格闘ゲームの台に腰掛けます。 必死に心を落ち着かせ、冷静になろうと考えたその時、 ゲームセンターの自動ドアが開くのが見えました。 そしてそこには、例の男が居たのです。 バクバクと心臓が鳴り、吐き気すら感じるほど、私はパニックに陥っていました。 ですが何を思ったのか、私はもう一度試す事にしたのです。 あの男の行動を。 財布からお金を取り出します。 コインを投入し、ゲームを開始します。 そして斜め向かいにある、起動していない機台のディスプレイを利用して、そのディスプレイに僅かに映りこむ男を、目の端で追いました。 私の後ろ約3m程、後ろのゲーム機台に、男が腰掛けました。 財布からお金を取り出し、それを投入しています。 軽快な音と共にゲームのスタート音が、後ろから響いてきました。 どうやら男は麻雀ゲームを始めたようです。当時流行っていた脱衣系のものだったと思います。 私はその動きを見計らって、すぐさま席を立ち上がり、店を出ました。 そこですぐに走って帰れば良かったものを、私はまたもやあの男を、最後にもう一度試してみようと考えてしまいました。 こんな恐怖に晒されながらも、私の好奇心はその恐怖を上回ってしまったのです。 私はすぐさま行動に出ました。行き先は決まっています。 商店街の中にある、確かサンリブという名のデパートです。 入り口に入ると、すぐさま目の前にあるエスカレーターに乗りました。 昇った先、2階の踊り場には、ガチャガチャが置いてあります。 当時ガチャガチャにはまっていた私は、これでもやって落ち着こうと考えました。 全ては偶然。自意識過剰な私の早とちりなんだと、思い込もうとしたんです。 けれども、浅はかな私の思いはすぐに、裏切られる事となってしまいました。 あの男です。 エスカレーターに乗って、こちらに昇ってきたんです。 私とは目も合わせず、どこか遠くを眺めるようにしながら、徐々にこちらに近づいてきたのです。 急いでその場を離れました。私は身を隠しながらフロアの隅に移動し、階段を利用して更に上の階へと移動しました。 婦人服売り場。しかも下着売り場に、私は入りました。 私自身は怪しまれる事はありませんが、男性一人がここに来る事はまずないでしょう。 しかし、男は来たんです。 まっすぐ他には立ち寄らず、婦人服売り場にある、女性用下着売り場のコーナーに。 逃げました。 エスカレーターを駆け足で降りました。 足がもつれこけそうになりながらも、私は走りました。 ですが、私は子供だったのです。 浅はかで、たいした知恵ももたない、衝動的に身動きしてしまう、矮小な子供だったのです。 デパートを出た私は、何を思ったのか、そのデパートの裏に逃げ込んだのです。 そして目の前にある、赤茶けた錆まみれの非常階段を駆け上がったのです。 無我夢中で昇りました。 来ないで、来ないで、来ないで! 何度も胸の内でそう叫びながら、上へ上へと駆け上ったのです。 やがて行き止まると、4Fと書かれた鉄の扉に手を伸ばしました。 ガチャガチャと鈍い金属音が響きます。が、扉は私の意に反して開きません。鍵がかかっていたのです。 当たり前ですよね。ですがそんなことすら、当時の私は予測できなかったのです。 扉のドアノブから手を離しました。一瞬静まり返ります。が、 カンカンカンカンカン、 下から音が響いてきます。 靴音でした。 カチカチと音が鳴ります。私の歯音でした。歯と歯がすごい勢いで触れ合い、カチカチと音をたてていたのです。 膝が折れ、その場に私の体は座り込むように崩れ落ちました。 真ん中の支柱の隙間から下を覗き込みました。 水色の服が、チラチラと見えました。 カンカンカンカン、と、昇ってくる靴音はどんどん近づいてきます。 涙と鼻水で私の顔はぐしゃぐしゃでした。 どうしてこうなったのか、どうすればいいのか?何も考えられません。叫ぶ事すら忘れて、私は嗚咽を漏らしながら、その場にうずくまりました。 が、その時です。 ガチャン、と金属音が鳴ったかと思うと、目の前の鉄の扉が開いたのです。 そしてそこから、デパートの制服を着た20代くらいの男性が現れたのです。 「こんなとこで何してるの?泣いてるの……?何、どしたん!?誰かにいじめられてんの!?」 大きな声で話しかけてくる若い男性。 すると下のほうから、 カンカンカンカン、と、 今度は凄い勢いで下っていく靴音が聞こえたのです。 「何あいつ?なんなん?あいつか?いじめてんの?」 そう言うと若い男性は私の返事も待たずに、急いで階段を駆け下り始めました。 「おいっ!ちょっ待て!」 二人の足音が遠ざかっていくのが分かります。 唖然としました、が私は力を振り絞り、フラフラと立ち上がると、ゆっくりと階段を降りました。 デパートを出て商店街の中に戻ります。 周りから聞こえてくる喧騒が、私のズタズタになった心を癒してくれました。 ですが、商店街の入り口まで来て、私は立ち止まりました。 足が棒のように重い。これ以上は動かせない。 呆然と立ち尽くす私の目に、電話ボックスが映りこみました。 迎えを呼ぼう、さっきの事を話せば、きっと親も迎えに来てくれるはず、そう思ったんです。 ボックスに入り100円を入れると、直ぐに家に電話しました。 何回かのコールが鳴ったのち、聞きなれた母親の声が、耳元で聞こえました。 泣きそうでした。いや、泣いていました。そのせいでうまく喋れません。必死に説明するも、 親にはまったくと言っていいほど話が伝わりません。 受話器の向こうで母親が苛々しているのが分かります。どう説明すればいいんだろう、そう思った時でした。 目の前に、こちらに接近してくる一台の車がありました。それはまるで、私の目の前でスローモーションのように見えました。 対向車線をはみだしこちらに迫るタクシー、タクシーの運転手らしき男性が、歩道を走りながら、 「車泥棒!!」 と叫んでいます。そして次の瞬間、そのタクシーは、私のいる電話ボックスの手前のガードレールに、 ガッシャーン!! と、けたたましい音と共に、頭から突っ込んだのです。 幸い、タクシーはガードレールを突き破る事はなく、電話ボックスの手前で停まりました。 辺りは騒然としています。私はその場でうずくまりまたもやガタガタと震えていました。 周りからは、 「運転手は!?」 「おらん!」 「どこいったんや!?」 「タクシー盗まれたー!!」 と怒鳴り散らすような声が飛び交っていました。 受話器からは母親が私の名前を連呼する声が聞こえます。 私は震える手で受話器を持ち直し、耳元へと運びました。 すると母親が、 「あんたいい加減にしなさいね!?何騒いでるの??まあいいわ……とにかく、今日はどうするの?泊まっていくの?帰ってくるの?」 「えっ?」 母親の声に、思わず聞き返します。 「泊まっていく?だ、誰が?」 私は声を振り絞り聞き返しました。すると母親は、 「アンタの事よ。30分前くらいに、今日は泊まるから帰らないよって電話してきたじゃない」 30分前? 私がまだあのデパートの、非常階段に隠れていた頃の時間です。当時携帯電話なんてものはありませんでした。 あってもポケベルくらいです。私が電話するなんてありえないしできない事なんです。 もう何がなんだか分かりません。 世界が意思を持ち、私に敵意を向けているかのような思いに駆られ、私は関を切ったかのように、その場で泣き叫びました。 § 以上が、私が過去に体験した話です。 脚色も誇張もありません。 ありのままの体験談です。 あまり怖くないですよね?正直訳の分からない話ですから。 ただ、一つだけ言える事があります。 私はこの体験をしたからこそ、怪談というものに興味を持ったんだと思います。 怪談は、答えのない不可思議な事ばかりです。 そう怪談は、不可思議連鎖の物語だと、私は思っています。 ただ……この話を友人にしたところ、その友人は私にこう言いました。 「お前、本当にコオリノだよな……?」 もちろん、 「そうだよ」 と、答えましたけどね(笑)

この怖い話はどうでしたか?

f X LINE

chat_bubble コメント(1件)

コメントはまだありません。

0/500

お客様の端末情報

IP:::ffff:172.30.1.202

端末:Mozilla/5.0 AppleWebKit/537.36 (KHTML, like Gecko; compatible; ClaudeBot/1.0; +claudebot@anthropic.com)

※ 不適切な投稿の抑止・対応のために記録される場合があります。

label 話題のタグ

search

短いのに後を引く恐怖話

読み込み中...

読み応えのある実録ホラー

読み込み中...

迷い込む長編異界録

読み込み中...
chat_bubble 1