
中編
廃墟となった学生寮で・・
ひろ 3日前
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あったから、そこには入るのを止めておいたほうがいいと思うよ」
「わかりました。ありがとうございます!」
彼女たちが廃墟に入っていったのを確認し、私はその場で機材を片付け始めました。撮った写真を液晶でざっと確認し、三脚やカメラを鞄に仕舞います。
その間、廃墟の中から彼女たちの嬌声や悲鳴なんかが聞こえていました。
荷物を片付け終え、私は廃墟を仰ぎ見ました。ちょうどあの黄色いテープの張ってあった部屋の窓が見えます。その部屋は二階にあったので、少し見上げる形でした。
「あ」
あの子たちだ。
見ると、例の黄色いテープの張ってあった部屋の窓から、彼女らのうちの一人が顔を出してこちらに手を振っているようでした。
(入らない方がいいよって言っておいたのにな)
私は苦笑しながら手を上げてそれに応え、その廃墟を後にするために歩き出しました。
その瞬間、背中を悪寒が駆け抜け、鳥肌が音を立てるように全身を覆いました。
廃墟の窓から手を振っていた女の子は、黒い髪の毛にグレーっぽい色の服を着ていました。
私がさきほど話していた女の子たちは、どちらも茶髪で、赤い服と白い服を着ていたのです。
咄嗟に廃墟を振り返りました。
あの窓には、もう誰の姿もありませんでした。
恐ろしくなった私は足早にその場を立ち去りました。
男気を見せて彼女たちの安否を確かめようかと一瞬思いましたが、そんな気概も恐怖にたやすく飲み込まれてしまいました。
確かその翌年、その廃墟は解体されてしまったと記憶しています。
私が見た窓から手を振っていた女の子は、果たして何者だったのでしょうか。
あまり克明には思い出したくない体験です・・。
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