
私の実家があるF町は某県県庁所在地の隅っこにある、山と田に囲まれた田舎町だ。
実家から車で15分程度、F山を少し登ったところに「F町展望の森」という公園がある。とはいっても遊具などは一切なく、荒く塗装された石畳に沿うように小さな池がいくつか点在するだけの広場だった。
私が幼少のころはまだ市による管理が十分行き届いており、父に連れられてよくこの広場に行っては自転車の練習をしていた。そして、練習の合間には池に生息していたザリガニを釣って遊んだ。太めの木の枝に糸を括り付け、先端に裂きイカを縛り付けたものを池にたらすと、面白いほどよく釣れた。また、広場の半分は高い丘になっていたので、段ボールをそりのように使って滑り降りる遊びもした。とても楽しい思い出だ。
ところで、その丘は登りきると車道が一本通っている。その車道の向かい側には仰々しい大きな丸太の柵が備えられている。柵の向こうは急峻な崖になっていたからだ。私は父からその話を聞いて以来、無性に柵の向こうを見たいと思っていたが、危ないから柵には近づくなときつく言われていた。一度父の目を盗んで柵に登ろうとしたことがあったのだが、ものすごい剣幕で怒鳴られたので、それ以降その柵に近づくことはなかった。
ある夏の日。例によって広場に来た。その日は弟の自転車の練習がメインで、私はほったらかしにされ、丘で一人そり遊びをしていた。すると、弟が派手にズッコケたとのことで、父が救急箱を取りに駐車場へ向かった。広場と駐車場を行き来するには300メートルほどの小径を通らなけらばならず、弟を抱えて早足で小径を行く父の姿はすぐに見えなくなった。
一人取り残された私はふと、丘の上が気になった。仰々しい丸太の柵に隔てられた丘の向こう側をみたいと思った。自分でもなぜ突然そんな気持ちになったのかわからない。けれど足は自然と柵に向かっていた。
私は車道を渡り、首ほどの高さもある柵をよじ登り、眼下に広がる景色を望んだ。
父の言う通り、険しい崖になっていた。ところどころに草木がみられるものの、荒々しい岩肌が遥か遠くまで続いていた。
何ともなしに手前、柵の真下に視線を移した。
人間がいた。
柵から真下に20メートルほど、少し傾斜のなだらかになっていたところに人間が寝転がっていた。手足があらぬ方向に折れ曲がっていて、あたりの岩肌は赤黒く滲んでいた。顔面は浅黒く変色し、腐っているようだったが、それでもしっかりと真上を向いていた。
死んでいた。
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