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帰らざる者の足音
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帰らざる者の足音

10時間前
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俺は昔、猫を飼っていた。名前はルナ、黒い毛の美しいメス猫だった。ルナは少し気まぐれで、時には俺を無視することもあった。

その頃、俺は都会のマンションで働いていたため、帰宅が遅くなることが多かった。だが、ルナはいつも俺が帰るのを待っていて、扉の前で鳴いて迎えてくれた。俺はルナを撫でながら、毎晩一緒に寝るのが楽しみだった。

5年前、ルナは急に亡くなった。ある朝、彼女が起き上がらないことに気づいた時、俺は何も感じなかった。柔らかい体を抱きしめて、最後の散歩をした。ルナの顔は穏やかで、まるでただ寝ているようだった。火葬を終えた後、数日間は涙も出なかった。

しかし、ある晩、俺が帰宅すると、玄関で泣いている自分に気づいた。近所の人が心配して警察を呼んだと聞いた時は、恥ずかしかった。

それから毎晩、ルナが居た場所に立ち尽くして泣くことが俺の日課になった。

そんな日々が続いたある日、ルナのおやつ袋から微かな音が聞こえた。普通の感動系の話なら、亡くなったペットが飼い主を訪ねてくる展開だが、当時の俺はその音を聞いて「ルナが俺に会いに来た!」と信じ込んでいた。

翌朝、袋には食い荒らされたような跡が残っていた。「やっぱりルナは俺に会いに来たんだ!」と確信した俺は、次の日もおやつを用意した。母親が心配そうにしていたが、俺はその思いを止められなかった。

日が経つにつれて、最初はルナの存在を感じるだけで満足だったのに、次第に実際に会いたいという欲望が膨れ上がっていった。帰宅後、いつものようにおやつを置いてから寝室で待つことにした。

夜中の3時、静寂を破るような「ざざっ」という音が玄関から聞こえた。俺はそれがルナだと信じて疑わなかった。心は高鳴り、期待でいっぱいになった。

音に気づいたのか、静かになった。「ルナ!」と叫びながら、扉を開けた。暗がりの中で、ルナの姿が見えない。代わりに、何かが袋の中を探っているのが見えた。

「ルナ!」もう一度叫び、近づいてみると、俺の目に飛び込んできたのは、信じられない光景だった。それはルナではなかった。骨がむき出しで、目も耳もない獣のような”何か”がそこにいた。

俺は恐怖に駆られて気絶した。目が覚めると、いつものように空の袋だけが残っていた。それ以来、俺はペットを飼うことができなくなった。何かが、俺の心の奥に巣食い続けているのだ。

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