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長編

試着室の怪

匿名 4日前
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てね」 「か、鏡のなかから……鏡のなかから私が、急に……」 「………」 その女性も、それまでの事件とおなじように試着室で着替え中に、鏡のなかの自分に襲われたようでした。 救急車で搬送されたあと、警察によって現場検証が行われましたが、今回もやはり犯人が存在したという証拠や目撃証言は得られませんでした。 そして、私にその事件とおなじような恐ろしい出来事が起こったのは、その翌日のことです。 春の新作シーズンに入り、本社から新しいデザインの洋服が送られてきたので、私が販売オリエンテーションのために試着してみようと試着室に入ったときでした。 試着室に入るとき、昨日までに起こった事件のことをふと思い出し、なんとなくイヤな感じがしましたが、仕事のためなので仕方なくドアを閉めて着替えを始めました。 なるべく鏡を見ないようにしていたのですが、ときどきは後ろ姿などを確認せずにはいられなかったので、チラッと鏡のほうを見ました。しかし、鏡に映っている自分にこれといって変化はなく、春の新作のグレーのパンツスーツも身体のラインが美しく出ています。 そこで、もう少しちゃんと洋服を見たかったので、おそるおそる身体を正面に向けて鏡でスーツをよく見てみることにしました。 相変わらず鏡のなかの自分には変わったところはなく、スーツも思ったより自分に似合っていたので、袖の長さやパンツの丈などの確認していました。 その時です。 私は自分の動きではない自分の動きを鏡のなかに感じたのです。 「え、なに?………」 と、心のなかに恐怖と疑問が横切りました。 そして鏡に映っている自分の顔を見て、全身の血が凍りついてしまいました。 まばたきもせずにじっと自分のほうを見ている自分の顔がそこにあったのです。 そして、みるみるうちにその顔は殺人鬼のような恐ろしい表情に変化し、鏡のなかの自分の身体の後ろから大きなハサミを握った手がさっと飛び出してきました。 私は、恐怖以上に、どういう行動をとっていいのかわからないという戸惑いのほうが大きく、頭のなかが空白になりました。 その瞬間、鏡のなかの自分の表情がさらに険しいものになりました。 目はカッと見開き、口もとはニヤリと笑っているかのようにさえ見えます。 そして、ハサミを持った手を大きく振り上げ、私に襲いかかってくるではありませんか。 私は身体が硬直してしまい、鏡のなかの自分の動きがスローモーションのようにゆっくりと見えたにもかか

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