
私が新しい生活を始めるために引っ越したのは、都会の高層マンションだった。新入社員としての私は、同じフロアに住む先輩と共同生活を送ることになった。先輩は、まるで姉のように優しく接してくれ、仕事のことや生活のことを色々と教えてくれた。
しかし、どうしても理解できなかったのは、先輩がいつも“うつぶせ”でしか寝ないことだった。普通の人は横向きや仰向けで寝るのに、先輩は決してそうしなかった。ある晩、思い切ってその理由を尋ねてみた。
「それはね、少し怖い体験をしたからなの。」先輩はそう言いながら、目を細めた。
先輩が学生だった頃、彼女は自分の部屋の天井に拳大の穴を開けてしまったという。特に気にせず放置していたが、ある夜、金縛りにあって目を開けたら、穴から何かが見下ろしていたのだ。その“目”と目が合った瞬間、意識を失い、朝を迎えた。以来、その恐怖が蘇るため、うつぶせでしか眠れなくなったという。
聞かなければよかったと、私は後悔した。先輩の優しさの裏に潜む恐怖を知ってしまったからだ。数年が経ち、今でもその話を思い出す度に背筋が凍るような寒気が走る。あの天井の穴には、いったい何がいたのだろうか。
それ以来、同じフロアの天井を見上げるたびに、不気味な気配を感じるのだった。私の新しい生活は、先輩との絆が深まる一方で、恐怖の影も背負うことになった。
その影は今でも私の心に潜んでいる。
何かが見ている… そう感じるのは、決して偶然ではないのだ。
何が見えるのかは、誰にもわからない。
ただ、あの天井の穴だけは、永遠に私の脳裏に焼き付いている。
いつか、再びその思い出が蘇る日のために、私はうつぶせで眠ることを選ぶしかないのだ。
その時、私の目の前には、何が待ち受けているのだろうか。
それを考えると、今でも身震いがする。
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