
中編
山奥の不思議な村
匿名 2015年7月16日
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小学生の頃に体験した話です。
私の住んでいたところには、近くにちょっとした山があり、友達とよく探検に行っていました。
親にはあまりそこの山には行くなと言われてましたが
言いつけを守らず楽しんでいました。
いつも通る道を抜け、山の峠から自分の住んでいる街を見たり
ある時はきれいな夕焼けを見たり、遠くに富士山が見えたり
その絶景が好きでした。
ある日、いつも通る道から奥まったところに、小さな祠を見つけ
なんだろう?と思いながら祠に行くと、その奥にさらに
細いけもの道のようなものを見つけ、好奇心からその道を辿っていきました。
友達はちょっと不気味がっていましたが、私は自分の地元ということもあって
大丈夫、大丈夫!と言ってワクワクしながらずんずん先頭きって先に進んでいきました。
どのくらい、歩いたでしょうか?
けもの道を抜け、目の前に、まるで昔話に出てくるような村が視界に広がっていました。
へえ~・・こんな山奥に…
私はなんだかひどく懐かしい気持ちにかられ、その山村に降りていきました。
友達が「帰ろうよ、ここ、なんか変じゃない?」というのを無視し
私はまたずんずん歩いて行きました。
村の中を、ウロウロし始めたのですが、やはりどこか何か変で。。
確かに、人が住んでいる様子はあるのに、
誰一人、いないのです。
急に恐くなって、友達と手をつないで、ダッシュして引き返そうとしたとき
ザザザーーッと大きな強い風が吹き荒れ、私はその場で転んでしまいました。
空を見上げると「ヴオオオオオオ~---」と
轟音のようなものが響き渡り、私は悲鳴を上げながら、友達と来た道を逃げました。
…が、私たちは途中迷ってしまい、なかなか祠を見つけられません。
だんだん暗くなっていくし、私たちはワアワア、泣き始めてしまいました。
「何しとる!?カナエ!」急に声をかけられて振り返ると
白いひげを生やしたおじいさんが立っていました。
どこかで見たような気がするけど思い出せなくて
「・・迷っちゃった。。」と泣きながら話したら
「これを持って行きなさい、さあ、早く!」と、何かの木の枝を渡されました。
「祠を通り過ぎるまで、決して振り向いてはいかん!何がいても目を合わせてはならん!」
と言われました。
どうして私の名前を知ってるんだろうと思いましたが、私たちは無我夢中で走りました。
やっと遠くに、祠を見つけて、私たちは「あ、あった、、」そう言い合い、走るスピードが少し落ちていきました。
祠に近づいた時、誰か立ってるのが分かりました。
白い服を着た知らない女の人で、俯いていました。
私たちはおじいさんの言っていた言葉を思い出して、その人を見ないように、通り抜けた時に
その女の人は低い声で「やっと・・・~~なのに・・」とつぶやくように言いました。
友達が思わず、「えッ?」と言って振り向こうとしたので、私は「振り向いちゃダメ!!」と
友達の手を引っ張って一気に山を降りました。
家に帰った時にはもう8時近くなってて、父と母にものすごく怒られました。
どこに行ってたの!!となったけど、
山に行っていたことは言えませんでした。
後日、祖母が心配して、話を聞いてくれました。
その時、仏壇のある部屋で話していたのですが、不意に部屋の鴨居を見上げて
思わず「あっ・・あの時の、おじいさん・・!」と声をあげてしまいました。
ご先祖代々の写真の中に、あの時に会ったおじいさんの写真がありました。
「ああ・あの人はあんたのひい爺さんだよ。実はね・・」
祖母の話によると、私たちが探検に行った山は、かつて差別を受けていた者たちが
ひっそりと集まって住んでいた。
けれどもある時、暮らしに困った山の人たちが、食料を分けてほしいと
この町にやってきた。
みんな冷たいもんで、誰一人、知らん顔、でも、父ちゃんだけは・・ああ、あんたのひいじいちゃんだけは
気の毒だからって、
畑で採れたもの、分けてあげて、、
ンである日、その山に人に誘われるように山に行って
それっきり帰ってこなくなった。。
私ら、町の人も、山に手分けして探しに行ったけんど
大体その村が、どこにあるのか全然わからなんだ。
結局、行方不明のまま、山の人も、それっきり、姿を見せなくなったんよ。
祖母は遠い眼をして、うっすらと涙を浮かべていました。
「きっと、ひいじいちゃんがあんたのこと、助けてくれたんね」と言っていました。
私が手に持っていたのは、南天の木の枝でした。
祖母の家の庭に同じものが植えてありました。
・・・あれから数十年がたち、田舎に帰った時に一度だけ、あの山に行ってみたことがありましたが
小さい祠を見つけることはできませんでした。
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