
冬の夕方、大学生の俺は、田舎の実家に帰る途中、妹の家に立ち寄った。妹の部屋に入ると、古いビデオデッキが目に留まった。そこで、ふと思い出したのは、子供の頃に夢中になった不気味な番組だった。あれを見ていた時の、ぞっとするような楽しさが忘れられず、つい再生することにした。
ビデオは、薄暗い部屋にいる女性がただこちらを見つめている映像だった。子どもの頃の記憶では、もう少し不気味さが和らいでいた気がする。しかし、今映し出されている彼女は、何かが違った。顔は青白く、目は虚ろで、あの頃の面影が全くなかった。何かを訴えかけるように視線を向けてくる。
再生を続けると、彼女は突然、悲鳴のような声で叫び出した。「助けて、助けて!ここから出して!」その声はか細く、どこか不安定さを抱えているようだった。俺は一瞬、体が凍りつく。何かが胸を締め付けるような恐怖が広がっていく。
その時、背後からかすかな気配を感じた。振り向くと、そこには笑顔の母が立っていた。母は俺にこう言った。「あれは見ちゃいけない。そんなものは、もう忘れなさい。」
その言葉に、俺は胸が締め付けられる思いがした。帰り道、母の言葉が頭の中で響き続ける。あの番組は何だったのか?彼女は何を求めていたのか?
実家を出た後も、彼女の声が耳に残り、いつの間にか、俺の心に恐怖が根を下ろしていた。結局、あの映像の背後にあった真実は、今でも解明されないままだ。何が映っていたのか、何が見えていたのか。俺には知る由もなかった。
ただ、あの女性の目が、今でも俺を見つめているような気がしてならなかった。どこかから、助けを求める声が聞こえる。終わりのない恐怖が、また始まっているのかもしれない。
「あれを見てはいけなかった。」その思いが、今も俺の心を支配している。
あの映像の背景には、何かが隠されていたのだろう。俺はそれを知ることができないまま、ただ恐れを抱えて生きている。
母の言葉が、いまだに耳から離れない。
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