
長編
みた夢
みほ 3日前
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夫を見ました。
サービス精神に溢れ、ファンを大切にすると言われている彼です。
彼は、大切なファンに向けるような、優しい目で私を見ていました。
でも、ふと視線を外すと、黒装束の男性の後ろを通って、ゆっくりと部屋を出て行きました。振り返ることなく。
私は声を出す事も、体を動かすこともできず、彼を引き止められませんでした。
ファン・・なの・・?
部屋に残った黒装束の男性に対しても言葉を発することができませんでしたが、彼に伝わるよう、また心の中で思いました。
私は彼の妻・・だと思いますし・・。生前って・・・私が死んだってことですか?私は死んでません!
黒装束の神官と屋敷の玄関から出ました。
赤い古い型のポルシェが待っていました。運転席には俳優の彼が座っています。
私と神官はその車に乗り込みました。
目的地に着けば、私にも分かると神官が言うのです。
ふと気づくと、私は彼のポルシェではなく、バスに乗っていました。
道中、神官はこの数週間で集めた情報を私に話してくれました。
不思議なことに、神官は老けたように見えました。老人に見えました。
私は大ファンの彼に関するイベントが目的の海外旅行に、よく行っていたそうです。
彼のファンでもない友達が私の旅行に付き合うのに疲れ始めると、私は一人で出掛けるようになったんだそうです。
私が遭った飛行機事故も、彼が映画の宣伝で滞在している地へ向かう時に起こったそうです。
死んでいるはずないんですけどね。
今もバスに乗っているくらいなんで。
2時間半から3時間弱バスに乗って、目的地に着きました。
バス停から20分ほど歩くと、草ぼうぼうの、人があまり立ち寄っている様子のない公園のような場所があり、私は神官に案内されるままそこへ入って行きました。
暫く進むと、蔦が絡まった碑が立っていました。
鎮魂の碑でした。
台座部分には飛行機事故の被害者の氏名が彫ってあり、以前誰かが蔦の葉を掻き分けた痕跡がありました。
神官が示した先、そこに私のフルネームがありました。
神官は私の少し後ろで、私を見守るように立っていました。
私は石碑の台座と蔦にすがりついて大泣きしました。
怖かったんです。そして、悲しかった。
目が覚めました。
家族と暮らす団地の私の部屋でした。
私は死ん
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