
長編
みた夢
みほ 2日前
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写真立てを家具の上から床へ、次々と落としました。
その時、いつの間にか夫の後ろに立っていた若い家政婦が「きゃっ」と悲鳴を上げました。
夫は振り返り、彼女に何か言いながら寝室を出て行きました。
私の足元には写真立てと、割れたガラスが散乱していました。
窓から庭を見ると、やはり、門へと向かう夫の車が見えました。
後部座席には、夫とあの女が乗っているに違いありません。
私はベッドに座りました。怒りと悲しさとで、涙を堪えられませんでした。
意外にも3時間ほどで夫が戻って来ました。
警察官二人を連れて、玄関ドアを入って来ました。
二人の警察官は歩きながら、観察するように辺りを見回しています。
夫は私を指し、警察官たちに何か話し、彼らは私に何か話しかけてきました。
彼らの英語が聞き取れません。
普段、夫の話す英語は聞き取れます。
日本人の私にわかりやすいように彼が話してくれるし、私の耳が彼の英語に慣れているからでしょう。
彼らの話す事はさっぱり解りませんでした。
連れ出されそうになったら抵抗しようと考えたのですが、何もされませんでした。
夫が通訳してくれればよさそうなものですが(とはいえ彼は日本語を話せません。聞き取った英語を私の分かりやすい表現で話してくれればいいのです)、彼は戸惑ったような表情をして、視線を私と警察官の顔を往復させていました。何度も何度も。
そして、三人で話しながら、玄関から出て行ってしまいました。
そのまま彼は3週間ほど家に帰りませんでした。
大きなダイニングテーブルの隅の席に食事の用意がしてあります。
いつも、私はその冷めた料理を一人で食べるのです。
味気ない食事です。
テーブルにはクラシカルな燭台がいくつか置いてあるのですが、ロウソクの火は灯っておらず、ダイニングルームの主な照明も点いていません。
壁につけられた小さな電燈の明かりだけの暗い部屋で、私は食事をします。
使用人にとって主人は夫で、なんなら、今後権勢をふるうのは不倫相手だと考えているのかもしれません。
そう考えると腹立たしいです。
私を小馬鹿にしている使用人を叱ってやりたいのですが、もうそんな気力も無くなりつつありました。
誰もあまり寝室に入ってきませんが、ふと戻ると、写真立ても元通りに配置されていることがあります。
その都度、
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