
里奈は新人看護師として、ある小さな病院で働いていた。
その病院の裏庭で、彼女が勤務を終える頃になると、いつも同じ不気味な女性が現れるようになった。
その女性は、まるで何かを訴えかけるように、里奈に近づいてきては、意味不明な言葉を繰り返していた。里奈の同僚であるベテラン看護師の美咲は、その様子を心配していた。
「里奈、その女性は何を言っているの?」
「それが、全然分からないの。『娘が…』とか言ってるみたいだけど、聞き取れないの。」
「ふーん、不気味ね。彼女はどこから来てるのかしら?」
「院長に聞いたら、どうやら患者さんらしいわ。認知症を患っているって。」
「なるほど、そういうことなら仕方ないかもね。」
数日後、里奈が仕事を終えて裏庭を通ると、またその女性が待っていた。
今日は、友人と共に秋の夜空の下で楽しい時間を過ごす予定だった。
「美咲さん、またあの女性がいる!」
「大丈夫、私が彼女を引き止めておくから、さっさと帰りなさい!」
里奈は美咲の助けを得て、無事にその場を逃れ、待ち合わせの場所へと向かった。
一方、美咲は女性に向かって言った。
「あなた、いつもここにいる女性はもう駅に向かっていますよ。」
すると女性は驚いて、目を見開いた。
「それでは、彼女も私の娘と同じ運命を辿るのか…」
「何を言ってるの?彼女はあなたのことを心配しているのよ。認知症だって自覚しないと、周りも困るの。」
美咲は少し厳しい口調で言ったが、女性は動じなかった。
「私が興味があるのは、その娘ではない。彼女の背後にいる影に興味があるのじゃ。」
「影?何を意味しているの?」
女性は美咲をじっと見つめた。
「その影は、以前私の娘に取り憑いていたのじゃ。娘はそれにより、精神が崩壊して自ら命を絶ったのだ。」
「なんてこと…」
美咲は背筋が凍る思いがした。里奈は無事なのか?
慌てて里奈に電話をかける。
「もしもし、里奈!大丈夫?」
電話の向こうからは、元気な声が返ってきた。
「美咲さん?どうしたの?」
「今どこにいるの?」
「今は駅のホームで電車を待っているけど、何かあったの?」
「いや、なんでもないの。ところで、前に見せてくれた友達の写真を送ってもらえない?」
「え?もちろん。今送ったよ。」
「ありがとう。じゃあ切るね。」
美咲は電話を切り、送られてきた友人の写真を女性に見せた。しかし、女性は首を振った。
「この子ではない。影の奴はもっと恐ろしいものじゃ。」
「その影って、結局何なの?」
女性はため息をつき、看板を指差した。
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