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長編

山祭り

あああああああ 3日前
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分ならともかく、社会人がそうそう手前勝手な事をする訳にはいかない。母とそんな話をしながら振り返ると、さっき魔王殿の前で謡っていた老人がこっちへ歩いて来るところだった。軽く会釈すると、向こうもにこっと笑って片手を挙げる。 「先程は、良いものを聞かせて頂いて、ありがとうございました」 「いやいや、お恥ずかしい」老人は首を横に振り、俺と母を見やりながら 「親子旅ですか、よろしいなぁ。ええ日にここへ来はった。今日は“山祭り”や」 「まあ、お祭りがあるんですか」祭りと聞いて、母の気持ちが弾むのがわかる。 老人が教えてくれる。 「今晩、川床の灯りが消えた時分から、この先の方でありますねん。“山祭り”は時が合わなんだら成りませんし、ほんまの夜祭りやから、知らん人の方が多いんや。 もし、行かはるんやったら、浴衣着て行きはった方がよろし。その方が、踊りの中へも入りやすいよって」 母は既に行きたくてワクワクしている。一時、『盆踊り命』だった人だから。 ま、いいか。俺は盆踊りは嫌いだが、仕方ない。付き合うか。 川筋の道沿いに、黄桃のような丸い灯りが、ぽつりぽつりと点いている。俺たちの他に、歩いている人はほとんどない。 奥宮へ近づくにつれ、笛の音がどこからともなく風に乗って流れて来た。山祭りはどうやら、思っていた盆踊りのようなものとは、全然違うものらしい。 奥貴船橋の袂をくっと左へ折れ、山の中へ入る細い道をたどると、笛の音はますますはっきり聞こえる。曲目はわからないが、ゆったりとしたメロディを、複数本の笛で吹いているようだ。 やがて、木立の間からたくさんの白い提灯と、その灯りが見えて来た。そこは体育館程度の広さの空き地になっていて、笛の音に合わせて数十人の人たちが踊っていた。 衣装は白地に紺色の流水模様の浴衣。女は紅の帯、男は黒字に金の鱗模様の帯。 踊るというより、舞うと言った方がいいような優美な動きで、普通の踊りの時のような賑わしさや、テンポあるいはノリは全く感じられない。 俺たちより先に来て、これを眺めていた隣の人がいきなり駆け出し、踊りの輪の中へ入って中の人と手を取り合った。知り合いがいたらしい。 前の方から、あの老人が笑みを浮かべながら、静かに俺たち親子に近づいて来た。 「ああ、来はりましたんやな」 「こんばんは。不思議なお祭りですね」 老人は不思議な言葉を口にした。 「あの中に、逢い

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  • 凄く怖かったです。でも良い話でした。凄く良かったです。でも怖い話は怖かったです。また怖い話を見ます。
    すみっコぐらし
  • 私も亡くなった両親に会いたいと思いました。 子供に戻って、たくさん話がしたい。 貴船の情景に、思わず涙が出ていました。
    まりん
  • こういう話は端的に書きなさい。
    先生
  • 素敵なお話をありがとうございました。貴船奥宮は摩訶不思議な空間です。改装される前の奥宮で龍穴から出てきた神様に遭遇したことがあります。そこは異空間ですね。追体験できました。
    さら
  • なんて素敵な…切なくなりました。 逢いたい人…私は母に逢いたいです。使う・選ぶ言葉も文体も素敵ですね… 同じ伝えるにしても本当、文才のある方っているんですね〜 情景まで浮かび、感動しました。
    K
  • 皆様、コメントありがとうございます。
    La
  • 涙出ちゃいました。とてもステキなお話です。
    うんこりん
  • 久しぶりに、活字で異次元を体験させていただきました。
    サキ
  • この親子だから起こった奇跡!涙涙!
    匿名
  • 凄くよいお話をありがとうございます。感動しました。
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