
長編
人形に呼ばれたのかな?…
ぼろぼろ 2018年7月31日
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一昨日、娘の中学時代の同級生でプチ同窓会が行われました。
参加したのは12人で
大学4年生と社会人が ちょうど半々だったそうです。
ところで、今日は学生組のS君の話をさせて頂きます。
以下、娘から聞いた話です。
S君とは別の高校だったのですが、高校時代からS君は
肝試しや心霊スポット巡りなどをしていたそうです。
しかし高校生の小遣いでは遠出など出来るわけもなく
地元限定だった為、あっという間に行き尽くしてしまった そうです。
S君は地方の大学に進学したのですが、そんな感じでしたから早速、
オカルト研究会というサークルに入ったそうです。
大学ではバイト代の殆どをサークルに あてていたそうです。
三ヶ月に一回のペースで二泊~三泊の遠出もしたそうです。
そんなS君ですが、今年のゴールデンウィークを最後に
サークルには顔を出していないそうです。
もう、顔を出すつもりはないし、サークル自体の存続も
怪しいと言っていたそうです。
一体、何が あったのか…
ゴールデンウィークの初日、サークルのメンバー5人で
心霊スポットに行く事になったそうです。
A君とB君は地元の子で実家通学らしいのですが、S君を含む他、
3人は地方から来ていて、就活の為、翌日には帰省するので
遠出は出来ないという事で、前にも行った事のある市内の
廃ホテルに行く事にしたそうです。
以前より少し荒れている感じではあったものの 特に怖い思いをする事もなく
拍子抜けしたそうです。
その後、ファミレスに入り明るくなるまで他愛のない話をして 解散したそうです。
S君は一旦、アパートに帰り着替えだけ持って そのまま実家に帰ってきたそうです。
そして三日後、A君から電話が かかって来たそうです。
『Bが大変だ!』
なんでも、B君が廃ホテルで倒れているところを
探索にやって来たグループに発見されたそうです。
直ぐに救急車で病院に運ばれたそうです。
運転免許証から身元は直ぐに分かったので 家族にも連絡が行ったそうです。
B君の母親から連絡をもらったA君は 直ぐに病院に行ったそうです。
命に別状は無いものの明らかに様子が おかしいと言うのです。
呼び掛けても返事もせず、ただ一点を見つめているだけだったそうです。
医者は、脳にも異常は見られませんし 一過性のもので徐々に回復するでしょう、と
言ったらしいのですが、本当に回復するのか不安だと
A君は泣きそうな声で話したそうです。
心配になったS君も就活の合間に見舞いに 行ったそうです。
なんとか話せるまでになっていたB君は
『置いてくなんて酷いよ』
『友達だと思ってたのに…』
S君にはB君が言っている事の意味が分からず、 後で合流したA君に話を聞くと
どうやらB君はファミレスで解散した後 一人で廃ホテルに向かったようなのです。
B君の母親の話によるとゴールデンウィークの初日から
B君は家に帰っていなかったそうです。
なので母親はテッキリ、サークルのメンバーと泊まり掛けで
出掛けたのだと思っていたそうです。
そんな時にB君が救急搬送されたと連絡が来て、驚いてA君に連絡したのだそうです。
A君とB君は幼馴染みで高校だけは違ったそうですが 大学で再び一緒になり、
互いの家を行き来する仲だったそうです。
B君の母親の話からして、B君はファミレスを出た後 一人で
廃ホテルに向かったのだろうという結論に達したようです。
ただ、B君自身はファミレスに寄って解散した事は 覚えていないようなのです。
5人で廃ホテルに行って、他のメンバーを見失い
ずっと他のメンバーを探していたと主張していたそうです。
救急車で運ばれたのは三日後だと説明しても
『違う違う。お前らが俺を騙してるんだ!』と言って
聞く耳を持たなかったそうです。
就活の合間だった事もあり S君は、その日のうちに
帰ったそうなのですが、A君とは頻繁に連絡を取り
B君の様子を逐一、訊いていたそうです。
検査結果に異常は無かった為、B君は4~5日で
退院したそうですが、その後も自宅療養をしており
とても就活どころではなかったそうです。
A君もまた、幼馴染みのB君の様子にショックを受け、
就活は ままならない状況だったそうです。
S君と他の地方組の三人は責任を感じて手当たり次第、
霊能者探しをしたそうです。
すると、サークルの後輩の同級生の母親が霊感のある方らしく
後輩が困り果てているS君達との橋渡しをしてくれたそうです。
信じてもらえるかどうか…
不安を抱えながらも恐る恐るB君の母親に話したところ、
藁にもすがりたい思いだったのでしょう。
直ぐに、その人に会いたいと言ったそうです。
S君達は日を改め後輩の同級生の母親をB君宅に
連れて行ったそうです。
『やっぱり…』
その方はB君宅へ行く前に廃ホテルに偵察しに
行っていたらしいのですが、
廃ホテルには佇む青年が居たらしいのです。
そして、その佇んでいる青年こそがB君だと。
『B君の思念が廃ホテルに置いてきぼりになっている状態』
である事。
『だから、もう一度B君を連れて行ってB君の思念と共に
帰ってこなければならない』と説明されたそうです。
本来なら、同じメンバーで行って帰ってくるのが
ベストらしいのですが、
その時点で内定が出ていたのは一人だけで、他は
就活中だった為、
後輩の同級生の母親がB君に付き添う形で決行したそうです。
B君は無事、正気を取り戻したそうです。
そして、少しだけ記憶も甦ったそうです。
あの日…
B君は廊下に転がっているフランス人形に目がいったそうです。
薄気味悪さを感じたB君は直ぐに その場を離れようとした時、
『置いて行かないで…』
という声が聞こえ 振り向くと、仰向けに転がっていたはずの
フランス人形の首から上だけがB君の方を見ていたそうです。
そこから先の記憶は抜け落ちていて、やはりファミレスに
行った事は覚えておらず、人形に気を取られているうちに
他のメンバーを見失い、ずっと探していた…
B君の記憶上では そのように なっているそうです。
サークルの趣旨からいけば そのフランス人形を
見に行くところなのでしょうが 誰一人として、
行こうと言う者は居ないそうです。
それどころか、活動も休止状態で自然消滅するんじゃないかと
S君は言っていたそうです。
そして、今後、二度と曰く付きのスポットには行かないとも…
一時は卒業も就職も危ぶまれたB君ですが、現在、就活で
頑張っているそうです。
追記
S君の体験談は二次会のカラオケBOXで語られたそうですが、
約三時間もの間、一曲も歌われる事は無かったという事と
全員が終電を逃してしまったというオチ付きです。
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