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第七項 本記録
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入室したのは、昼の業務が一段落した時間帯でした。

建物は古いものの、用途は明確です。市が管理する資料保管施設で、役目を終えた帳簿や記録媒体が一時的に集められる場所でした。

私は外部委託の整理担当として、内容の価値ではなく保存方法の妥当性のみを確認する業務に就いていました。

情報に意味があるかどうかは問われません。どう残り、どう消えるか。それだけを確認します。

最初に渡されたのは、薄い封筒でした。中身は磁気カードが一枚だけ入っていました。表面には番号もラベルもありません。担当者は「これを扱った部署で、作業者が次々に体調を崩した」と説明しました。因果関係は不明です。カード自体は読み取り不能で、エラー表示も出ません。ただ、端末に挿入すると、ログの更新順が必ず乱れるのだそうです。

次に確認したのは、紙の束でした。見た目はコピー用紙に近いのですが、触れるとわずかに温度が低く感じられました。

内容は断片的なメモ書きばかりで、意味の通る文章はありません。

ただ、読んだ後に「読んでいない気がする」と訴える人が多いと説明されました。施設内では「抜け落ちる紙」と呼ばれているそうです。

私は淡々と記録を続けました。素材、状態、申告内容。異常というものは、説明が共有される過程で輪郭を持ちます。

対象は引き金であって、原因ではありません。そう整理できた時点で、この作業は終わるはずでした。

三日目の午後、作業台の端に小さな端末が置かれていました。

手のひらサイズの古い音声レコーダーで、型番は削れて判読できません。再生ボタンだけが異様に摩耗していました。

前日に別室で「勝手に再生位置が進む」という報告を聞いていた機器と、外観が一致していました。誰かの冗談だろうと判断しました。

私は電源を入れず、外観のみを撮影し、寸法を測り、管理票に記入しました。

「再生位置変動型媒体。原因不明」

翌朝、その端末は消えていました。

代わりに、管理票の中央部分が一枚、きれいに抜き取られていました。破れた形跡はなく、切断面は揃いすぎていました。

補足欄に追記しようとして、そこで気づきました。その欄には、すでに文章が書かれていました。

参照番号欠落

対応媒体未確認

登録履歴なし

筆跡は、私自身のものでした。

四日目、隣室で保管していた紙束が、すべて無地になって見つかりました。インクが消えたのではありません。

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