
さっき、2月の「渡り廊下のもう一人の俺」を書き込んだ大学1年の俺だ。
これで高2の1年間もいよいよ最後の月になる。
修了式を終え、春休みの直前だった3月中旬の放課後の話をさせてほしい。
その日は新学期(高3)に向けた春休みの自主練の最終日で、俺は誰もいない極寒の陸上部室に一人で戻り、私物の整理をしていた。
2年間、あの学校の土地で数々の地獄を生き延び、ようやく最高学年になれる。
そんな安堵が頭をよぎった瞬間、あの土地は俺の2年間の努力そのものを全否定するような、最後の怪談が待っていた。
今回は、高2の最後の最後で俺の未来を奪おうとした、3月の怪談をここに詳しく吐き出させてほしい。
誰もいない静まり返った部室で、自分のロッカーを開けた時だった。
薄暗いロッカーの奥に、何か大きな塊が押し込まれていることに気づいた。
手前に引っ張り出してみて、息が止まった。
それは、俺が今まさに肩にかけているものと「全く同じ傷、同じ汚れ」がついた、陸上部のエナメルバッグだった。
何だこれ、と思いながら恐る恐るそのチャックを開けると、中からドロドロに腐って黒い液体を滴らせる「高3の教科書」や、俺の顔写真が貼られた「4月以降の日付の入った死亡通知書」が大量に溢れ出てきた。
それと同時に、部室の白い壁一面に「お前に次の1年は来ない」「ここで終わりだ」という血文字がびっしりと浮かび上がり、俺の視界が急激にセピア色に染まって、自分の身体が指先から灰のようにサラサラと崩れ始め、消えかけ始めた。
高1からの地獄の経験で、脳裏に最悪のルールが弾け飛んだ。
自分の肉体が消滅していく強烈な恐怖に負けて、部室から逃げ出そうとしてはならない。
逃げ出せば高3の未来を完全に失い、この春休みで存在ごと歴史から消去される。
未来を掴み取る唯一の脱出ルールは、【自分が今使っている『本物の陸上部バッグ』から、これまでの2年間あのグラウンドを走り込んできた証である『履き古したランニングシューズ』を引っ張り出し、そのロッカーの奥の偽物バッグに向けて全体重をかけて叩きつけながら、『俺の2年間を舐めるな!』と大声で叫ぶ】ことだけだった。
オカルトの知識じゃない。
俺がこの学校で生きて、走ってきたという「本物の歴史」をぶつけるしかなかった。
「消えて、たまるか……ッ!」
感覚の消えかける両手で、俺は自分のバッグを引き裂くように開き、泥だらけのスパイクとランニングシューズを掴み出した。
後日談:
- 俺は床に転がった自分のシューズを拾い上げ、胸に強く抱きしめながら、誰もいない部室でしばらくボロ泣きした。 ロッカーの奥には、いつものように空っぽの空間が広がっているだけだった。 【噂すら誰も聞いたことがない、進級という未来そのものを嫉妬して消し去りにくる未知の呪い】だった。 だけど、あれは絶対にただの春休みの錯覚なんかじゃない。 なぜなら、あの怪談があってから大学1年になった今でも、俺は【新学期や新生活の時期になって、新しい教科書やスケジュール帳を開くだけで、あの部室の血文字がフラッシュバックし、自分の身体が消えていくような強い喪失感に襲われる】んだ。 特に3月になると、あの日偽物に叩きつけたあのボロボロのシューズの泥の臭いが鼻腔に鮮明に蘇り、激しい動悸が止まらなくなる。 あの学校の怪談は、学年が変わる最後の最後まで、俺が積み上げてきた歴史ごと俺を抹殺するための最悪な怪談を仕掛けた。 高1、高2と、俺はあらゆる地獄を潜り抜けた。 だが、これで終わりじゃない。 次からは、あの学校の怪談との最終決戦。 高校生活最後の1年、【高3の4月】が始まる。
この怖い話はどうでしたか?
chat_bubble コメント(0件)
コメントはまだありません。



