
長編
隙間人間(コピペ
匿名 4日前
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事を僕の家族は約束した。
それから、風呂に入る度に彼の体に傷や痣がないかどうかを確認するのが、僕の日課になった。
彼の体からは、毎日新しい痣が発見された。
その度に僕の家族は彼の傷に薬を塗ってあげた。
「僕、中学生になったら、絶対あの家から逃げ出すわ。もう、本当にいやや」
彼は手当をされながら、涙をにじませてよくそう呟いていた。
「じゃあさ、もう完全にうちの子になっちゃえよ。本当の兄弟になろうよ、僕たち」
僕がそう言うと、彼は本当に嬉しそうな顔をしていた。
そのまま時が過ぎ、僕と彼が六年生の夏休みを間近に控えたある日、彼が突然学校を休んだ。
最近は体も大きくなり、昔に比べてだいぶ丈夫になった彼が珍しい事もあるもんだと、僕は学校から預かったプリントを手に、久しぶりに一人で帰る家路を急いでいた。
昔ほど怖く感じなくなった繁華街を通り、昔よりも更に生い茂った生け垣を越えて、僕は彼の家の玄関についた。
念のためチャイムのボタンを押してみたが、三年前と同じく、やはりチャイムは壊れたままだった。
僕は玄関のガラス戸を叩いて家人を呼んだが、家の中からは何の音もしなかった。
暫く僕は待ってみたり、再びガラス戸を叩いてみたりしたが、結局いつまで経っても誰も出てくる事はなく、僕は引き戸の隙間にプリントを押し込んでから自分の家に戻った。
翌日も、その翌日も、彼は学校を休んだ。そうしてそのまま、学校は夏休みに入った。
僕の母と父は彼を酷く心配し、彼の家に何度も足を運んだが、結局、彼は疎か、彼の家族に会う事さえ出来なかった。
夏休みの半ばには、近所では彼の家は夜逃げをしたのだと言う噂が流れ始めた。
そうして、僕はその後彼に会う事はなかった。
夏休みが明けると、クラスの誰もが彼の事を忘れていた。
先生でさえ、彼の机が空席な事には触れず、九月に入った頃に、いつの間にか彼の机はかたづけられてしまった。
クラスのみんなが薄情だとか言う訳ではなく、元々あまり他の子達と彼が仲良くなかったせいもあり、
しかも夏休みという大きなイベントを挟んでしまった事で、皆すっかり忘れてしまったのだろう。
やがて彼の住んでいた長屋も取り壊され、こぎれいなマンションに建て変わった。
こうして、彼がこの町にいた痕跡さえも、消えてしまった。
それでも、僕は彼の事を忘れた事などなかった。
僕の部屋には、彼へのクリスマス
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chat_bubble コメント(9件)
- 一人っ子のはずがいつの間にか弟いるんだが?ぬん
- 何か読んだことあるようなまい
- この話面白い。読み入ってしまった。友達が不憫でしょうがないが。うんこりん
- 主人公は一人っ子のはず… でも、二つ離れた僕の弟よりも 彼は小さい… 弟も隙間に行ったの・?匿名
- え、死んだの、投稿者さん怖話
- 自分から隙間に入っても幸せにはなれん菜々氏
- 長! お疲れ様です!あいこ
- 切ない匿名
- 隙間にいる人、見かけたことある人が怖がっていました。 隙間にいた人、偉い人らしいです。お金に困っているようで、偉い人がお金に困っていると、 普通の人の生活もこれからもっと大変になるかもしれないと思いました。クネクネ