
中編
大きな古時計
rayna 2日前
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娘がまだ幼稚園に通っていた頃の話なので、今から10年近く前のことだ。
私と妻と娘の3人家族で2DKの木造二階建てアパートの一室を借り、一階部分に住んでいた。建物の一番端の部屋だ。
契約してから5年程度経過し、特に困ったこともなく平穏に生活していたのだけど、ある時娘にせがまれて『大きな古時計』を一緒に歌うことに…。
心を揺さぶる寂しげなメロディーに、別れを強く意識させられる歌詞がマッチした名曲だけど、普段は娘と声を合わせながら楽しく歌える名曲だ。
この歌をいつものように何気なく歌い始めたら、『天国へ昇るおじいさん』の辺りで突然圧倒的な悲しみの感情が溢れ出てきて、途中で歌えなくなってしまった。
最初はつっかえながらもなんとか歌っていたのだけど、途中から涙が止まらなくなり、仕舞には嗚咽しながら、急激に高ぶる感情に支配され、我ながらどうすることも出来なくなってしまった。
娘が心配そうに私を見つめ、妻は笑いながら「何やってるの?」と近寄ってきたのだけど、私の普段とは余りに違い過ぎるおかしな様子に本気で心配し始めた。
私はとめどなく襲いかかってくる謎の悲しみに打ちのめされながら、きっと酷く疲れているのだろうと思って、その日は早めに休むことにした。
それから数日が経過していたが、理由の判らない謎の悲しみがずっと私を悩ませ続けていた。
家から出て仕事をしているときは不思議に何も感じないのに、帰宅して寝る頃になると突然襲いかかってくる悲しみ。
そんな状況が一週間近く続いたある日の晩に、突然不思議な夢を見た。
見知らぬお年寄りの男性が悲しげな表情で目の前に立っていて、何かを訴えかけている。でも何を言いたいのか私には判らない。
そしてその男性は悲しい表情のまま諦めたようにスーッと消えたのだ…。
明晰夢と言えるようなハッキリした夢に驚きながら目覚め、その意味を考えながら出社し、モヤモヤしながら仕事を済ませ、帰宅するとアパートの前に警察官のバイクが留まっていることに気が付いた。
空き巣でも有ったのかと心配しながら自分の部屋に入ると、妻からビックリするような話しを聞かされた。
どうも我々の部屋から一番遠い反対側の二階に住んでいたお年寄りの男性が、一週間ほど前に孤独死していたらしいのだ。
どのような経緯で発見されたのかは判らない物の、今日になって発見され、パトカーやら救急車やらが駆けつけて大変だったらしい。
後に噂で聞いたところによると、亡く
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