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中編

先生の話

匿名 2015年8月27日
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私の学校は年に一度、ある村で自然を学ぶ合宿のようなものを行います。 そこは山に囲まれた小さな村で、電車も1日に一本だけしか来ないような田舎。 私のクラス担任で生活指導の先生は、その村の出身でした。 そんな合宿ですが、定番のようにみんなが怖い話をします。 しかし、その先生だけは今まで参加をしようとしませんでした。なぜだか気になった生徒たちは小学校最後だからと一生懸命話をせがみました。 先生は始めは断っていたものの、やがて根負けしてため息をつきました。 「何があっても知らないからな?」 そう前置きをつけると、先生は口を開きました。 先生は子供の頃、いわゆるガキ大将というやつで、他の子供たちと度胸試しと称した遊びを繰り返していたそうです。 そんなある日、夏休みの中頃に、彼らの間で肝試しをやろうという話が持ち上がりました。 山の奥にある廃寺の本堂で一晩過ごすというものです。 彼らはその夜、彼らはこっそりと各々の家を抜け出して集まりました。 肝試しのルールは、集まった全員で本堂に泊まり、最後まで残った者の勝ちというものです。 先生とその他の子供たちはワクワクしながら挑みました。 本堂の中はやけにひんやりとしていて、ホコリや虫などがいました。 みんなで輪を描くように座り、しばらくは談笑していた先生達でしたが、次第に気味が悪くなってきました。 そのうち一人、また一人とギブアップして帰って行き、残るは先生ともう1人、健太という男の子のみになりました。 この健太という子はなかなかの肝っ玉で、先生とガキ大将の座を争っている子でした。 先生は負けじと本堂に残り続けましたが、夜がふけるにつれ怖くなってきました。 そして午前2時頃。 本堂の扉が揺れました。 「おい、2人ともいるのか?お前らの母ちゃん、お前らが家にいないことに気づいてカンカンに怒ってるぞ。」 二人は慌てたそうです。 「おいどうする?ここで終わりにするか?」 しかし先生の問いに健太は首を振りました。 「・・・・・何かおかしい」 「は?」 「こんな時間まで母ちゃんが起きてるのか?しかも、俺の母ちゃんは看護婦だ。今日は夜勤だから家にはいないんだよ。泊まり込みだって言ってた」 言われてみれば怪しい。 そんなやりとりのあいだにも本堂の扉の向こうから二人を呼ぶ声は続きます。 「なあ、早く出てこいよ。なあってば」 そこで先生は気づきました。 本道の扉には上半分にすりガラスがはめ込まれており、そこから外が見えるようになっていました。しかし、すりガラスの向こうには人の姿どころか虫一匹見つかりません。それに、扉には鍵などついていません。開けろと頼む必要が無いのです。 「・・・・・なんだあれ」 思わず先生が呟くと、健太は少し顔を青くしながら囁いた。 「・・・・・とにかく開けない方がいい。」 2人は震えを隠しつつ夜明けまで本堂から出ないと決心しました。 扉を叩く音はどんどん大きくなっていきます。しまいには扉が外れるほどの強さでたたき始めました。 「おい開けろ!!開けろ!!!!」 呼ぶ声も乱暴なものになっていきます。 先生と健太は扉からできるだけ離れ、壁にぴったりと背中をつけて耳を塞ぎました。 それでも扉を叩く音は止まず、本堂が揺れるほどの勢いで扉が叩かれるまでになりました。 そのままなんとか朝を迎え、扉の音が止んだのを確認した2人は恐る恐る外へ出ました。 扉は叩かれすぎて見るも無残な姿になっていたそうです。 すりガラスにはベッタリと人の手形のようなものがつき、その下の木の板もベコベコに凹んでいました。 その後先生はもちろん健太も、二度とそのお寺に近寄ることは無かったそうです。 その三ヶ月後、寺は取り壊され、宿泊施設が建ったとか。 先生はそう締めくくると、全員の顔を見渡しました。 「残念な事にこの話にはまだ続きがある。」 「あの寺が取り壊された後に出来た宿泊施設ってのがな、今俺達が泊まっているこの宿なんだよ。」 部屋が静まり返りました。 「未だに噂があるらしい。夜になると部屋の扉を叩いて回る霊が出るってな」 今日私たちが泊まった宿は、いつもの旅館とは違い、山の奥にありました。 「だから言っただろ。何が起きても知らないって」 先生はそう言って肩をすくめました。

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