
中編
れい子おばちゃんの知らせ
けいすけ 2018年2月20日
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これは、私が18歳の正月の時期に体験した不思議で悲しいお話です。
「ヨシヨシ、栞は優しい子だね。お祖父ちゃんが大好きだったんだね。沢山泣くのはカッコ悪い事でも何でもないんだよ。おばちゃんと一緒に泣こう。」
中学三年生の時に祖父が亡くなった時に泣いてばかりいた私を優しく抱き締めてくれて頭を撫でながら一緒に泣いてくれたのがれい子おばちゃんだった。
あの時のれい子おばちゃんの優しい温もりは今でも忘れられない。
「去年は泣き顔の栞ちゃんにしか会えなかったけど、今年は笑顔の栞ちゃんに会えたわ。それに、去年は男の子みたいだったけど今年は可愛くなったね。栞ちゃんの笑顔は一番の武器で魅力でもあるのよ。だから、笑顔だけは忘れないでね。」
…祖父の一周忌の時にれい子おばちゃんは優しい笑顔でまた笑ってくれた。
祖母や叔母さん方や母と従姉と姉…私の周りにいる女性の先輩方は笑顔が綺麗で素敵な人達ばかり。
考え方から色々魅力的。
だから…たまにしか会えない叔母さん達と家族や皆でお菓子を食べながら色々なお話をするのが私は大好きだった。
勿論、れい子おばちゃんは私にとって尊敬する女性の先輩の一人。
だから…沢山長生きしてほしかった。
しかし…悲しい別れは何時も突然。
その日の早朝のまだ真っ暗な時間に私は夢から覚めた。
しかし、目は開けられず目をつむっている状態でも…何故か脳内に障子を開けて入って来る白い着物姿の女性の姿が浮かぶ。
その女性は部屋の中を一周歩き回る。
耳には布団の上を歩く足音が聞こえる。
寝ている私達を起こさないように気遣いながら歩いているのか優しい足取り…が、足を踏まれた。
感触的には猫かと思い、目を開けられる状態だったので無意識に起き上がりました。
すると…裾だけが歩いている白装束の姿が。
「あっ、ごめんね。起こしちゃったね。」
…聞き覚えのある声がしました。
その瞬間に私は夢の世界に引きずり込まれました。
「足、ごめんね。おばちゃんも栞のお祖父ちゃんがいる世界に逝く時期がきたの。優しい子だから、大人になるにつれて色々嫌なことがあるかもしれない。でもね、それは栞ちゃんが大人になるための修行何だよ。沢山泣いても良いし沢山落ち込んで悲しんで転んでも大丈夫。だけど必ず笑ってね?栞ちゃんの笑顔が大好きだよ。ばあちゃんの事お願いね。」
…白装束の主はれい子おばちゃんだった。
優しい笑顔は綺麗な光に包まれてれい子おばちゃんは観音様みたいでした。
朝になり、起きると私は涙を流しながら目を覚ましました。
顔を洗い、茶の間に入ると祖母の携帯がなりました。
「福島のれい子おばちゃんが今朝方亡くなった。」
…涙が出て来た。
私は祖母と両親にその場で今朝方見た夢を話した。
「そっか。栞の所におばちゃん来てくれたんだね。」
「お父さんも栞と同じだった。」
「れい子さんったら…年上の私よりも先に逝くなんて。姉ちゃんってなついて可愛いかったのよう。」
…祖母は当時幼かった従兄弟である伯父や伯母達の面倒を見ていて色々苦労したり苦戦もしたようですが、何だかんだで弟や妹のように可愛いがっていた人です。
「先に逝って御免ね。私の分まで長生きして幸せになってって伝えておいてね。」
…祖母に対するメッセージを託すれい子おばちゃんは49日の日にそんなメッセージを私に託してくれました。
祖母は涙を浮かべながら微笑んでいました。
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