
長編
トンネルと通勤電車
匿名 2022年7月16日
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以前結婚していた時の嫁は、とても霊感が強いようで、私の知らない、あるいは理解出来ないような経験をたくさんしていました。
一方で私は全くその様な事はなく、何が見えるでもなく、ただの普通の平凡な男です。
怖いもの見たさでホラー映画を観たり、ホラー小説を読んだりはするのですが、リアルタイムの嫁の話には耐えられないこともあり、極力その場では何も話さないという取り決めというかお願いをしていました。
嫁曰く、これは無理、危険と感じて関わりたくないケース、危険を感じない、ただ悲しいケースなどいくつかのパターンが有るそうです。
ただ受け取る、あるいは感じ取る側の状況、体調次第でその許容レベルが変わるらしく、害は無さそうだと思っていたのに、自分の精神状況に負の影響を受ける事があるので、やはり何も無いに越した事はないけれど、見えてしまうのだから仕方が無いと、諦めた口調で言っていました。
こういった話を書く場合で、それがありのままの事実の時、映画や小説と違い、いわゆるオチの様なものが無く、話がボヤけた状態で終わる事が多いですが、あくまでも事実のみ、たくさんの話はありますが、その内の2つをありのままに書こうと思います。
トンネル
よく車でドライブに行く時、高速道路のトンネルを通る事があります。事故で有名なトンネルなどを走るときは要注意です。高確率でトンネルの中で様子がおかしくなります。途端に無口になったり、いきなり驚いたり。何回か経験するうちに、トンネルに入る前から目をつぶってもらい、出たら声をかける様になりましたが、その前に起こった事です。
さっきのトンネル通っている時って何か見えた?
後悔するくせに、怖いもの見たさに聞いてしまう私の悪い癖です。
1番怖かったのは…
トンネルの途中からトンネルを出てしばらくの間、ずーっとガラスに人がへばりついて貴方を見ていたよって言われた事です。
ちょー怖い、聞かなきゃよかったと言うと、あっ、1人じゃないよ、横にも後ろにもいたよ。3人か4人いた!などと追い打ちをかけられて、もう2度と聞くものかと決意しました。
通勤電車
通勤電車って大体、何時何分のこの車両のこのドアから乗るって決まっていますか?
私の嫁はそういったルーティンの様なものにこだわりがあり、決まった場所からいつもの電車に乗ると言っていました。
近くにいわゆる霊の様なものがいるかいないか、雰囲気でわかる時が有るそうです。大きく分けると2通りあるらしく、人を探して動いているか、ただそこでじっとして居るかの2パターンです。後者の場合は特に害は無く、アッ居るなという程度。
前者の場合は物色する様に人から人へと動くそうです。これは悪いケース。共通点はそれが立っている場合、下半身が下に行く程透けて見える事。
当駅始発の電車で座って通勤していた嫁は、ほぼ座って通勤していたらしく、下を向いて眠る事が多かったと言っていました。時間は朝の7時30分から8時頃、通勤ラッシュの最中、電車の中は混んでいます。
ふと目を覚まし、顔を上げた時に感じる違和感。混んでいる電車の中を頭の高さが変わらずに、まるでスケートの様に、滑る様に移動する男性。
止まる度に前にいる人の顔を覗き込み、移動を繰り返しています。つまり悪いパターンです。
嫁は諦める様にため息をつき、その男性を目で追い続けます。
ここで不思議な事が一つあります。嫁に聞きました。何故下を向いて知らんぷりをしないの?
嫁は答えました。可哀想だから。誰か気がつく人を見つけない限り、ずーっと探し続けるから。との事でした。
そのうちに必ず訪れるそうです。それと目が合う瞬間が。口元が気持ち緩んだ様な感じでスーッと近づいてくるその男性、嫁は諦めた様にため息をついて目線をはずし、下を向きます。
突き刺さる様な視線を感じ、仕方なく視線を上げると無言でジーッと見つめてくるその男性。
よくあるホラー映画と違い、話しかけてくる事はないそうです。ただ見つめてくるだけ、そしてしばらくの間はついてくるそうです。悪い時は家にまでついてくる事があると言っていました。ただ終わりは必ずあって、タイミングは様々だけど、ふといなくなるそうです。
つきまとわれている間は肩が異常に重くなったり、頭痛がしたりするそうです。確かに心当たりがあって、嫁がやたらに肩が凝る、偏頭痛がする、などという時がありました。表情も気のせいか少し暗く感じます。それとは対照的に表情が明るく、スッキリしている様に見える時もあります。事情がわかるまで、私は身体の事を気遣うばかりで、それ以外の理由については当然わかりませんでした。
1番怖かったのは…
あのさ、ずっと言わなかったんだけど、洗面所の横に洗濯機あるでしょ。私が家に居る時、ずーっと男の人が座ってたの。1週間くらいかな。今はもう居ないよって言われた時です。
やっぱり聞かなきゃよかったとお決まりのセリフを私はいいましたが、嫁は笑いもせずに、今までそういう人達が話しかけてきた事は一度もない。私も話しかけた事はない。だけどあの男の人の目はとても怖かった。あんなに怖い目は見た事がなかった。だから変な事を私の家族にしないでってはっきりと心の中で念じたんだって言っていました。当時、おかげさまで何事もなかった様に思います。
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