
それはまだ便利な文房具屋が少なかったころのこと。家の近くには古びた文房具店がありました。店の入口には木製の扉があって、開けると独特のインクの匂いが漂ってきました。狭い店内には埃が舞っていて、奥には薄暗い部屋があり、中には居住空間が隠れていました。
その店を営むのは、背中の曲がった中年の男性で、いつもニコニコと微笑みながら子供たちを迎えてくれました。彼は本当に優しい人でした。兄弟のいない僕にとって、放課後のこの店での時間は心の癒しでした。
男性の店には、万年筆や文房具がたくさんありました。特に人気だったのは、彼が手作りした特製の万年筆でした。100円という安価にもかかわらず、書き心地は抜群で、みんな夢中になっていました。
なぜあんなに安く提供できるのか、僕は不思議に思っていました。友達と一緒に、裏の部屋に秘密の工房があるのではと噂したものです。
ある日、いつも通り店に寄ったとき、男性がどこにも見当たらず、大声で呼んでも出てきませんでした。仕方なく、奥の暗い部屋に足を踏み入れ、庭を覗いてみました。
薄暗い庭の真ん中には、錆びた金属の箱があり、そのそばに古びた道具箱がポツンと置いてありました。
「おじさん…」
恐る恐る声をかけたその瞬間、道具箱が開き、男性が慌てて飛び出してきました。彼は何故か手に大きなカッターを持ち、怒りに満ちた表情で「勝手に入るな!」と叫びながら迫ってきます。
僕は「ごめんなさい!」と叫び、逃げ出しました。あの時の彼の顔はいつもの優しい笑顔とはまるで違い、まるで悪夢の中にいるようでした。
そんなある日、僕は母に怒られました。愛猫のミケにいたずらして、無理やり色を塗ったからです。ミケが姿を消して一週間、心の痛みが募りました。
学校帰り、いつもの文房具店に寄り、ミケのことを思いながら万年筆を手にしていました。
「心配だろう…」
男性は心配そうに言い、皺だらけの顔を寄せてきました。
「いつか帰ってくるさ」と言い、万年筆を使ってみると、何か硬いものが口に当たりました。慌てて吐き出し、手のひらを見ると、それは赤い色をしたミケの爪でした。
その瞬間、背筋が凍り、僕は激しく嘔吐してしまいました。あれは間違いなく、僕がイタズラして失ったミケの爪だったのです。
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