
幼少期、私はお人形が大好きだった。特に、目を閉じると眠っているように見える赤ちゃんのお人形が特にお気に入りだった。弟しかいなかった私にとって、この人形はまるで妹のようで、いつも持ち歩いていた。しかし、小学校に上がると、その人形は次第に遊ぶこともなくなり、部屋のインテリアの一部として放置されてしまった。
ある冬の夜、テレビで放送された特集に心を奪われた。内容は「髪の伸びる人形」や「涙を流す人形」といった恐ろしい話ばかりで、私は急に怖くなり、その人形を押し入れにしまった。しまう瞬間、目を閉じるはずの人形が私の方をじっと見つめているような気がして、その場から逃げるように部屋を出た。
数年後、両親が離婚し、弟と私は母と共に新しい場所へ引っ越した。以前の生活を思い出すことは少なくなり、私たちの生活は新しい環境にすっかり馴染んでいた。しかし、ある日、父の訃報が届く。事故で亡くなったという知らせを受け、私たちは葬儀に出席した。
葬儀の後、弟は「昔住んでた家の近くを散策してきたよ!」と楽しそうに話しかけてきた。「懐かしい子に会ったんだ!モカちゃんって覚えてる?」その名前を聞いた瞬間、心臓が凍りついた。モカちゃんは、私が人形に付けた名前だ。弟と一緒に遊んだ記憶の中には、そんな子はいないはずだ。頭の中が混乱し、言葉が出なかった。
その時、インターホンが鳴った。夜も深まり、こんな時間に誰が来るのか、恐る恐るドアに近づく。心の中で、モカちゃんが本当に存在しているのか、そうでないのか、葛藤が渦巻いていた。しかし、私が確かに知っているのは、モカちゃんの名前をつけたのは私だということだけ。ドアを開ければ、そこに待っているのは…人形を抱えた女の子だった。彼女は微笑みながら、私を見つめていた。私の心の奥底で、何かが目覚める音がした。彼女は、私を呼んでいる。私が忘れかけていた、あの人形の名前で。
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