
私の母はどこかぬけたところがあって、いつも何かしらの珍事を引き起こす。彼女を見ていると、思わず笑ってしまうことが多い。
そんな母を持つ私は、少し気恥ずかしい思いを抱えながらも、彼女が愛おしい存在であることは否定できない。
例えば、彼女はテレビを見ながら全く関係ないことを言い出したり、友だちとの会話で突拍子もない解釈をしたりする。そんな彼女と過ごす時間は、いつも笑いに満ちている。ただ、時には彼女の純粋さが心配になることもあった。
特に、彼女が詐欺に遭ったり、訪問販売に引っかかったりする話を聞くと、胸が締め付けられる思いがする。お金のトラブルは何度もあったし、私はいつも注意していた。
でも、あの日のことは特に忘れられない。冬のある夜、母は「大変!大変!」と慌てて帰ってきた。私は驚いて「何があったの?」と尋ねると、彼女は息を切らしながら「人を轢いちゃった!」と告げた。
私は一瞬何を言っているのか理解できなかったが、彼女の真剣な眼差しに引き込まれた。ガレージに連れて行かれると、彼女の車は凹み、助手席には血まみれの少女が横たわっていた。
「一体どうしたの?」と尋ねると、母は「轢いちゃった子」と不安げに答える。少女は高校生くらいに見え、顔は見るも無残な状態だった。母は私の手を強く握りしめながら、どうすればいいのかと不安そうにしている。
私はその時、運転席に乗り込み、母には後部座席に座るように指示した。夜の海辺へ、瀕死の少女を埋めに行くことになった。
トランクにはスコップがあったが、一本しかないため、私は一人で穴を掘ることにした。全身の筋肉を使う作業は辛い。しかし、母はその横で独自の応援ソングを歌い続けていて、私は思わず笑いそうになってしまった。
日の出までに、私は少女を埋めるための穴を掘り終えた。母はその様子を見守りながら、時折笑いを交えた言葉を投げかけてくる。私は少女の顔に土をかぶせ、周囲を整えながら、日の出の美しさに見とれていた。
帰宅後、私たちはそのままベッドで寝てしまった。十代の私は、その状況に照れくささを覚えながらも、母が相変わらず可愛らしいことを実感していた。あれから10年が経ち、私たちはその事件を笑い話として語り合うようになった。今も母は変わらず、私にとって特別な存在である。
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