
長編
もう1人のお姉ちゃん
けいすけ 2017年9月28日
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このお話は私が小さい頃に体験したお話です。
私が子供の頃に夜になると、大きなタンスの扉の前に白い服を着た女の子がいました。
当時の姉と年が変わらない女の子です。
両親に姿は見えていないことからこの世の者では無い事は分かりますが、幽霊と言うモノを知らずにいて怖いと思わなかったので余り気にはしていませんでした。
そんなある日、今でも覚えている怖い出来事がありました。
四歳の私は夜中目が覚めました。
目が覚めた私の足下に白い着物を着た髪の毛がボサボサの女性が居ました。
産まれて初めて感じる恐怖…。
不気味な笑顔を浮かべ私の足を引っ張ろうとしたその時でした。
「…触るな。」
横から女の子が出て来て、怖い表情で女性を睨み付けるとその女性の首を絞めていました。
女性は叫び声をあげながら消えていきました。
女の子は私に優しい笑顔で微笑むと頭を撫でてくれました。
「怖かったね。もう大丈夫だよ。心配だから様子を見ていたの。」
その優しい笑顔と手のぬくもりを感じた私は安心感から泣いてしまいました。
私の泣き声で目が覚めた両親も優しく頭を撫でてくれました。
次の日の夜に女の子にお礼におやつのキャンディーを枕元に置いてその女の子がいるタンスに向かって手を合わせて呟きました。
「お姉ちゃん有り難う。」
と…。
その女の子は夢の中で嬉しそうにキャンディーを食べていました。
そんな出来事から月日がたち、私は小学二年生になっていました。
小学二年生の春先に末の弟が風邪を引いて苦しそうでした。
小さな身体で苦しむ弟をみたら可哀想になりました。
寝起きの私は弟と目があったので自分の布団に入れました。
「大丈夫?早く元気になってね。」
子供心に私に抱きついてきた小さな弟が可愛くて守りたくて…。
「神様、弟の風邪を治して下さい。弟の苦しさを私に下さい。私はお姉ちゃんだから大丈夫です。」…と、心の中で祈りました。
それから二度寝をしてしまった私は、弟が元気になり布団から飛び出したので気がつきました。
祈りが通じたのかは判りませんが、弟の風邪がうつりました。
「拓也が可愛そうだったから。神様にお願いしたの。お姉ちゃん、拓也元気になったね。」
弟の様子を見に来て、私の異変に気付いた姉はビックリしていました。
「拓也は元気になったよ。でも、栞まで風邪引いたら駄目だよ。お馬鹿。だけど、拓也を心配してくれたんだね。」
姉は優しく私の頭を撫でてくれました。
「お姉ちゃんの手…冷たくて気持ちいい。」
無邪気に笑う私を姉は優しい瞳で見つめ、体温計に目を移しました。
「栞のお馬鹿~‼39度もあるじゃない‼お母さ~ん‼」
姉は驚きながら下に居る母を呼びにいきました。
そのまま病院へ私は連行されました。
「だって…拓也小さいのに可愛そうだったから。」…両親や祖父母は呆れながらも優しく接してくれました。
中学生だった兄と高校生の姉は果物ゼリーと缶のポカリを買ってきてくれました。
一才違いの兄と弟は学校から帰ると私のためにコンビニからアイスやら当時大好物だったシゲキックスを買って来てくれました。
その日の晩、女の子もお見舞いに来てくれました。
目を覚ますと、枕元にいました。
「栞は優しいお姉ちゃんだね。でも、栞まで苦しんでしまうからこれは駄目だよ。まさか、本当に取るなんて。私が持って行ってあげるから。明日ゆっくり寝て目が覚めたら元気になるよ。」
と、優しい笑顔で頭を撫でてくれました。
目を覚ますと次の日の夕方でビックリしたのを覚えています。
熱は微熱でしたが、その次の日には元気になりました。
そんな出来事からまた月日がたち、色々な出来事がありました。
性犯罪に遭ったりパワハラ上司の被害に遭ったりと…色々ありましたが、必ずその女の子が夢の中に出て来てくれました。
「怖かったね。命が無事で良かった。どんなに落ち込んでも良いし泣いても良いよ。ばあちゃんとお母さんに必ず愚痴をこぼしなさい。でもね…自殺だけは許さないよ‼産まれて会えなくても、栞は私の妹だよ。大好きだよ。だから…笑顔を見せて。大丈夫…お姉ちゃん、この子の中にいて栞を守るから。この子も栞が大好きだから大丈夫。この子からみていて栞を傷付ける奴等は近寄らせないから。仕事に行くときは一緒に連れていきなさい。貴女の仕事振りを見ているわよ。」
…亡き祖父が一才の誕生日の時に買ってくれて以来ずっと可愛がる小さな犬のぬいぐるみを指さしました。
パワハラ上司は次の年に異動になり一緒に仕事をせずに済みました。
小さな頃からのそんなエピソードを母に話しました。
すると、母は悲しい顔をしながら私に告げました。
「実はね、お姉ちゃんの一つ上にお母さんは流産している子供がいたんだよ。そっか、その子だったんだね。優しいお姉ちゃんだったんだね。言わなかったけど、お母さん達のお部屋とか階段の踊り場に居たんだよ。子供の頃から栞は霊感がある子だったから心配してくれたのね。」…と。
「お母さん…私は大好きなお姉ちゃんが二人居るんだね。余り甘えることは出来ないけど、お姉ちゃんの分まで弟を可愛がるよ。」泣きながら母に告げました。
「ま…栞を守りたくなる理由は分かるよ。辛い事があった分、これからは良いことがあるし。これ以上悪いことは絶対来ないから。」
母は明るく笑いながら言いました。
その時、誰かが後ろから抱き締めるような優しい温かい感触がしました。
後日談:
- 長々とすみませんでした。 読んで下さり有り難うございます。 生まれつき不思議な勘があり、色々と体験していますが、ほとんどは亡くなった近親者や身内にまつわる不思議な体験ばかりです。 代々子供が大好きなのだと思います。 幽霊と呼ばれる存在は肉体が無いだけで私達生きている人間と変わらないと思います。 肉体が無くなっても消えない存在が具現化した姿…私はそう思います。 無責任に子供を中絶して…産んでも虐待をして命を奪い傷付ける大人達。 自分の欲望を満たすためなら性犯罪を犯し命を奪うような動物以下の鬼畜外道。 そんな人間の事件をニュースで見聞きする度に私はこの世の生まれてこれなくても、妹や叔母や姪として認識してくれて愛情をくれる人達の優しい笑顔を思い出します。 お腹に宿った瞬間から1人の人間として性格はあるのかと思います。
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