
大学を卒業したばかりの私は、初めての一人暮らしを始めた。冬の寒い夜、私は高層ビルの中層階にある部屋を借りていた。オートロック付きのビルは、入居者の安全を守るために設計されていたが、逆に私を不安にさせる要素でもあった。
その日は仕事が終わり、ビルの1階でエレベーターを待っていた。すると、オートロックのドアが開き、初めて見る男性が入ってきた。30代前半と思われる彼は、スーツ姿で無表情だった。私の心臓が少し高鳴る。
男性も同じエレベーターを待っているようで、間もなくやってきたエレベーターに私が先に乗り込んだ。彼も後から続いて乗り込み、私はボタンを押した。彼は私よりも上の階のボタンを選んだ。エレベーターは狭く、言葉を交わすこともなく、ただ静寂が続いた。
7階に着くと、私は普段のように自分の部屋に向かおうとしたが、なんとその男性も後ろにいた。私の後ろをついてくる彼の存在が不安を煽る。部屋の前で立ち止まると、彼もまた停止した。鍵を開けることに躊躇し、背筋が凍った。もしかしたら、ここで襲われるのではないかと。
思い切って振り返ると、彼は「あ、間違えた」と言い残し、再びエレベーターへと戻って行った。その瞬間、私は安堵したが、同時に彼の言葉が心に引っかかった。彼は本当に間違えただけなのか?それ以降、彼には会わなかったが、今でも時々思い出す。あの時、もし私が鍵を開けていたら、どんな結末が待っていたのだろうか。私の心の奥底には、彼の存在が消えることのない恐怖として残り続けている。
冬の夜、ひとりきりの部屋で、あの男の影が再び姿を現すのではないかと、今でもドキドキしている。彼の正体は、ただの通りすがりの男だったのか、それとも別の何かだったのか。
それ以来、エレベーターの中での静寂が、私には恐怖の象徴となった。誰かが後ろにいると感じる瞬間が、どれだけ恐ろしいものかを知ってしまったからだ。
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