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短編

葬られた同級生たち

しもやん 2019年10月24日
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 中学の同級生、S浦くんが亡くなった。もう十年近く前になる。  死因は扇風機のつけっぱなしによる低体温症とのことだった。享年二十七歳だった。  それほど親しい仲だったわけでもなかったが、通夜には出席することにした。  腐れ縁の友人たちと本当に扇風機の風で死ぬやつがいるのかと、軽口を叩き合っていたのを覚えている。  通夜の会場は葬儀屋の一画で、ぼんぼりが回転して場ちがいとしか思えないド派手な光彩を投げかけている。  このあたりを支配している曹洞宗の坊さんがすでに読経を始めていた。  参列者は多かった。見覚えのある顔もちらほらある。ひそかに憧れていた梅村さんもいた。声をかける度胸はもちろんない。  実家はド田舎だったので、集まっている連中もそれ相応の身なりだった。  いい歳をした大人の男が気ちがいじみた髪の色をしている。金だの茶だの彩も鮮やかに。  誰も彼もが耳には安ピカのピアスをぶら下げ、通夜というよりカチコミ前の暴力団事務所といった趣だった。  女もろくな歳の取りかたをしていないようだった。  とにかくやたらに老けている。当然髪の色は気ちがいじみているし、安ピカのピアスの悲壮感は男どもを圧倒している。  常識すら学ぶ機会がなかったのだろう、子連れのやつすらいる始末で、会場は幼児の泣き声に席巻されている。  わたしは突然悟った。亡くなったのはS浦くん一人ではなかった。  かつて青春を謳歌していた中学生たち全員が、たった十年足らずで見る影もなく落ちぶれてしまった。  田舎から脱出することを選んだごく一部の連中はおそらく、東京なり大阪なりで成功しているのだろう。  だが漫然と地元に残ったこの連中は。大学はおろか高校にすらろくすっぽ通っていない哀れなこの連中は。  こいつらは社会的に死んだも同然だった。彼らは生ける屍だった。  わたしたちは陰鬱な気分で会場をあとにした。  中学の同級生全員の通夜会場を。

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