
「いけず石って知ってる?」
友人の一人がふと口にした。私たちの会話は、寒々しい冬の夜に突入していた。いけず石は、私有地と公道の境界に置かれた大きな石で、通行する車両から家を守るために設置されている。京都の古い街並みではよく見かけるが、その意義は知られていないことが多い。だが、私たちが知っているのは、それが単なる障害物ではないということ。
友人の一人、Aは最近、京都の郊外に旅行に行った際に不気味な体験をしたという。彼は、古い漫画の舞台となった神社を訪れるため、友人たちと車で出かけた。道は狭く、整備もされていない。運転に不安を感じながらも、彼は曲がり角でいけず石に車をこすってしまった。
「その瞬間、石が転がって、何か見えたんだ。」と彼は言った。恐る恐る確認すると、石の間に白髪のようなものが見えた。まるで生首がこちらを見ているかのようだったという。驚いて車に戻り、発車しようとした瞬間、再び振り返ると、ただの石になっていた。彼は安堵し、石をどけようと近づいたが、そこには確かに髪の毛がついていた。白髪のようなそれは、彼が見た幻影と同じだった。
その瞬間、家からガラガラと音が聞こえ、Aは恐怖に駆られて逃げ帰ってきた。私たちが話し合う中、別の友人、Bがにやにやしているのに気づいた。彼は、京都に住んでいたことがあり、いけず石の噂を思い出したのだと言う。「実は、京都では嫁姑の仲が悪い家の姑が亡くなると、嫁がこっそりと遺髪を抜いて、いけず石の下に敷くという風習がある。」と、Bは語り始めた。
その話を聞いた私たちは、恐怖よりも興味をそそられた。Bは続けた。「遺髪を取ることで、故人は成仏できず、石に縛りつけられる。だから、いけず石は悪意の象徴なんだ。」私たちはその話に驚き、Aの体験と結びつけて考え始めた。すると、Bは「でも、そんな風習が本当にあるのか?遺髪を取るために業者を使うなんて、普通は考えられへんやろ。」と笑った。
Aはそれでも「でも、あの石に髪がついていたのは事実だ。」と反論した。Bは、実はその白髪は接着剤が糸を引くように見えたのではないかと説明した。「昔、友達と一緒にいけず石をひっくり返したことがあって、確かに白髪みたいなものがくっついていたんや。だから、Aもそれを見間違えたんちゃうか?」
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