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長編

出土した災厄

しもやん 3日前
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軍はことさらこの戦法をよく採用した。多数の住民がひしめく南京市で便衣兵を忍ばせられた場合、占領側はある程度神経質にならざるをえなかっただろう。従軍していた外国記者が目撃したという住民の殺戮というのは、この便衣兵への攻撃であったとすればつじつまは合う。  以上の理由から、わたしは南京大虐殺はなかった、もしくはあったとしても主張されるような規模ではなくはるかに少数のものであったと考えていた。祖父の日記を読むまでは。      *     *     * 昭和12年12月18日  祝賀会も終わり、隊は治安維持活動に専念す。多くの家屋が支那軍によって焼き払われたため、それらの復興にも尽力す。今日は倒壊した井戸の掘削に精を出す。明日も引き続き井戸の掘削を続ける予定なり。 昭和12年12月19日  井戸の掘削の折、面妖なるものを掘り当てる。半径六尺ほどの球形、質感は柔らかな肉質、二寸五分ほどもある多数の目玉が掘削者である支那人の男を睨んでいた由。それは金切声で絶叫し、ものすごい速さで地中を掘り進んで消えてしまった。いまのはなんだったのかと呆気にとられていると、掘り当てた支那人が何事かをしきりに叫び始めた。いまのは太歳だ、という。太歳を掘り当ててしまったのだと。 昭和13年1月15日  満州への転戦が決定す。      *     *     *  太歳(たいさい)とは中国に古くから伝わる物の怪である。  太歳は地中を高速で移動しており、木星の動きに合わせてその位置を変えるらしい。見た目はぶよぶよの肉塊で球形、多くの目がでたらめに開いた不快極まりないしろものだという。  この物体は非常に不吉なものだとされ、むかしから(石炭を掘るなどして日常的に土を掘り返していた)中国人に恐れられてきた。太歳を掘り当ててしまうと爾後、たいへんな災厄に見舞われるという。  祖父たちが掘り当てた奇妙な生物は太歳だったのだろうか。それとも迷信深い現地住民が岩を見まちがえただけで、祖父もそんなようなものを見た気になっただけだろうか。わたしはむろん後者だと確信している。そんな超自然的存在がこの世にいるはずはない。  だがもしそうだとしたら。祖父の日記は唐突に翌年の記録に飛んでいる。太歳を掘り当てた12月19日からいったいなにがあったのだろうか。記録の抜けている期間、すなわち12月中旬から下旬までのあいだは南京大虐殺が起きたとされている

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  • こわい
    ブースター
  • 小説にして商業出版できるくらいレベル高い。歴史に絡めた、圧倒的にリアリティある話は凄いの一言です。
    匿名
  • レベル高いけど、分かりやすかった。高レベル投稿を期待します。
    防空頭巾
  • 史実に絡んだ怖い話、ちょっとレベルが高いですね。日記の空白期間、何が起こっていたのか気にはなります。もあ30年以上前に他界した私の祖父も満州や華南などの戦地に赴いていて、その当時の話を子供ながらに興味深く聞いたものですが、当時の自分に歴史的な知識と見識がもっとあればいろいろ聞けたのにな、と今更ながら残念に思っています。
  • このお話、はっきり言って怖いのか何なのか わからないんですが。解説が多いです。 もっと分かりやすく書いてくださいね。
    しゆか
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