
長編
出土した災厄
しもやん 3日前
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期間とおりしも一致する。祖父はなぜその期間の記述だけ避けたのだろうか。
わたしの祖父が当時からアル中気質の、錯乱した若者だった可能性は否定できない。太歳を見ただのという記述を大まじめに書く精神病者だったのかもしれない。だがもしそうならば、そもそも彼は軍人になっていなかったはずである。召集令状(いわゆる赤紙)で徴兵された人間でも、戦闘に不適格だと判断されれば兵士にはなれなかった。日常的に妙なものが見えるとのたまう男を採用するほど、帝国陸軍もまぬけではなかっただろう。
それに日記の文面から読み取れる祖父像は、わたしの知っている粗暴な男とは似ても似つかない。彼は祖国に忠誠を誓う模範的な帝国軍人であり、どう考えても大酒を食らって妻を殴るような人間には思われない。祖父がああなってしまったのは、なにか理由がある。それが抜け落ちた12月下旬のできごとに起因するのだとしたら。
祖父は太歳を掘り当てたことで、南京大虐殺を引き起こしてしまったのだろうか。
わたしにはわからない。
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- こわいブースター
- 小説にして商業出版できるくらいレベル高い。歴史に絡めた、圧倒的にリアリティある話は凄いの一言です。匿名
- レベル高いけど、分かりやすかった。高レベル投稿を期待します。防空頭巾
- 史実に絡んだ怖い話、ちょっとレベルが高いですね。日記の空白期間、何が起こっていたのか気にはなります。もあ30年以上前に他界した私の祖父も満州や華南などの戦地に赴いていて、その当時の話を子供ながらに興味深く聞いたものですが、当時の自分に歴史的な知識と見識がもっとあればいろいろ聞けたのにな、と今更ながら残念に思っています。あ
- このお話、はっきり言って怖いのか何なのか わからないんですが。解説が多いです。 もっと分かりやすく書いてくださいね。しゆか