
長編
呪術館
匿名 2018年7月20日
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これは私と友達が大学生だった頃の夏休みに体験した出来事です。
その美術館は埼玉県◯◯市にありました。
山間にひっそりと佇むそこは、数年前に客足が遠のいて廃業になってしまったとのこと。
今はもう廃墟になっていました。
やがて、私と友達はその美術館に纏わる噂を聞くようになります。
【そこに入ると呪われて、二度と外には出られない】
【幽霊が住み着いているお化け屋敷】
など、その美術館に関する噂が多く出ていました。
私と友達は好奇心からか、その廃墟の美術館に肝試しに行こうということになりました。
7月×日(木曜日)。
私と友達は地図でその場所を調べ、友達の運転する赤い車で美術館へ向かいました。
山間の道路を車で走っていると、運転していた友達が助手席の私にふとこんな話をしてきました。
その話はなんとも信じがたい話でした。
そのとき、私と友達しかいない車内に
もうひとり。
こちらをじっと見つめている黒髪の真っ赤なワンピースの女性がいたそうです。
しかし、私が振り向いてみてみましたが、そんな女性はいませんでした。
友達はまだ美術館についていないにもかかわらず、怖くなってしまい、引き返そうとします。
私は怖がっている彼女をなだめて、車をさらに走らせようとしました。
やがて地図にあった通り、山間にその美術館はありました。
あちこちがさびていましたし、美術館が朽ち果てていたのがよくわかりました。
車から降りて美術館の入り口まで来たとき、友達が言いました。
「ねえ、やっぱりやめようよ。怖いよ!」
私は友達が怖がっていたのはわかりましたが、何故が私は美術館の中に入ってみたいと思ってしまいました。私自身は幽霊は信じていなかったからです。
「じゃあ、車で待ってるから」
友達は私にそう言って車に戻っていきました。
私はひとりでこの美術館の中に入ることになります。
ひとりとなると少し不安でしたが、それでも中に入ってみました。
美術館の中は薄暗く、あちこちに穴もあいていました。
私はその美術館のホールをウロウロしました。しかし、入り口以外に何処にも他へ移動する扉を見つけることができずにいたので、そのまま受付の机の上を覗いてみました。
そこにはボロボロになった美術館のパンフレットが置いてありました。
【ようこそ!この美術館は驚くこと満載の世界です!どうぞごゆっくりこの世界を体験してみてください!】
美術館のパンフレットはかすれていましたが、そんな決め言葉が書いてあるのがわかりました。
私はパンフレットを手にとって辺りを見回しました。
私以外に誰かいる気配もなく、ただ静かで少し不気味な雰囲気はありました。
しばらくしてとくに何か驚くこともなかった私は帰ろうとします。
入り口の扉に手をかけるときに、もし開かなかったらどうしよう と頭に思い浮かびましたが、すんなりと入ってきたときのように扉は開きました。
外に出てみた私は、あれ?と思いました。
車で待っているはずだった友達が何処にもいませんでした。
私は友達に置いてきぼりをくらい少しムッとしたのと同時に不安になりました。
どうしようと思いながらも、山間の道路まで出てみると、ちょうど遠くの方からタクシーが走ってくるのがわかりました。
タクシーに乗り込んだ私は、そのまま自宅の近くまで乗っていきました。
友達が何故、先に帰っていなくなってしまったのか?
私はそんなことを考えながらも家に帰りました。
7月◯日(金曜日)
その日、私は朝から不安でしょうがありませんでした。昨日の夜、あれから友達がどうしていなくなってしまったのか、それを聞こうとおもい友達に電話をかけてみましたが、何故か電話が一向に通じませんでした。
朝になって、友達が家に帰っていないことがわかったのです。
何かニュースになっていないかとふと、リビングに置いてあった新聞を広げてみました。
【埼玉県◯◯市の山間で行方不明】
その記事をみた私はハッとなりました。
そこには私の友達の顔写真が載っていたのです。
私は不幸が重なって頭の中がパニックになりました。
昨日、あれから急いで家に帰ってきました。父から電話があったのです。母が急に倒れたからすぐに帰ってきてくれとのことでした。
母の容態は過労とのことで救急車で病院に運ばれましたが、大事には至らず、少し様子を見れば大丈夫とのことでした。
しかし、友達が行方不明になってしまい、私は混乱していました。
そんな私にちょうどコーヒーを飲んでいた父が言いました。
「ちょっと今日、真奈美の借りてもいいか?」
私は今日は何処にも行きたくありませんでした。
その日、父は私の赤い車で何処かへ出かけていきました。
あの時、急いで車で帰ることになり、必死に友達の名前を叫んだり、入り口の扉を開けようとしましたが、声も届かず、扉も開けることはできなかったのです。
亜沙美、ほんとにごめんなさい。
私は母の元へ駆けつけることで精一杯でしたが、友達のことを思うと複雑な気持ちになりました。
数年経った今でも私の友達は行方不明のままです。
皆さんもあの美術館には入らない方がいいです。
帰ってこれなくなりますから。
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