
長編
最後の乗客/タクシー霊の正体
匿名 2024年11月7日
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竹藪に慰霊碑があるものだと思っていたが、竹藪の手前で藪が深くなり、藪漕ぎして竹藪の中に入った。
そこには広場があったが、地蔵も碑も見当たらない。何かの台座とコンクリート片はあったが、これが地蔵と碑の跡なのだろうか。それとも墓石跡なのか。
落胆して来た道を引き返していると、池の北東隅付近にも竹藪が見えた。池畔で地蔵と碑があるとすればあそこしかない、と確信し、階段下まで戻ると、そこからその竹藪方向にも歩道があった。
「ここで間違いないはず。」と、その竹藪に入るとあった。錫杖を持った地蔵と碑がある。碑の人名を確認すると、18歳の女性の名は二名だけ。このIとYという二人がまさしくタクシー霊の少女。
思わず「やった!この二人に間違いない!」と声を上げてしまったのだが、その瞬間、急に曇り空が一層暗くなった。
夜になる前に雨が降り出すかも知れないと、そそくさと地蔵と碑の写真を撮り、階段口へと引き返して行ったのだが、途中、道にはみ出していた藪に片足を取られ、転んでしまった。
トゲ混じりの雑草が足首に絡みつき、なかなか取れない。その内、曇り空は更に暗くなってきた。
「夏の夕方なのにこの暗さは異常や。」と思っていると、池の奥の方から何やら聞こえてきた。
「・・・て・・・て・・・」微かな声だから何を言っているのか、よく聞き取れなかったが、突然、先程行った広場のある竹藪が、風もないのに「ザザーッ」と音を立てて揺れた。
すると次の瞬間、その竹藪から人影が次から次へと出てきた。通常なら「人影」ではなく、「人」と認識できるのだが、異常な暗さから、そのような見え方だった。
異常な暗さと言えば、7、8年前、愛媛県の鞍瀬渓谷の最奥の滝へ行った時も同様だった。まだ15時半だったにも拘わらず、厚い雲が出てきて、ヘッドランプがなければ道の判別ができないほどだった。
その人影は透けているように見える。しかも歩いている、というより、ゆっくり浮いて移動しているように思えた。
段々声もはっきりしてきた。
「・・・て・・・って・・・連れてって・・・」
早く階段を上がって国道に出たいのだが、足に絡まった雑草にトゲが混じっているせいで、すぐには外せない。
そうこうしていると、今来た碑の方向から池に、「ドボン」と、何か重量のあるものが落ちたような音がした。
その音に一瞬、ビクッとなったが、それから池に波立つ音がした後、岸の藪を掻き分け、何かが這い上
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