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深夜の依頼
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4時間前
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「すみません。灯篭まで行きたいんですが」

これは、あるタクシー運転手の佐藤の体験談だ。

冬の夕方、雪の降る中、酔っ払った客を駅まで送った後、佐藤は帰路に着こうとしていた。すでに疲れ果てていた佐藤は、さっさと家に帰りたかった。

「今日はこのまま帰ろう」

そんな矢先、視界の隅に人影が映った。振り向くと、40代くらいの男が立っていた。

「すみません、灯篭まで行きたいのですが」

男が指差した場所は、近くの山中にある古びた灯篭のある場所だった。こんな寒い夜中に…と佐藤は思い、断ろうかと時計を確認した。しかし、疲れ果てていたこともあり、つい引き受けてしまった。

男は深いため息をつき、後部座席に座った。彼は何かを抱えているようで、俯きがちだった。普段ならミラーを見ない佐藤だったが、今日はその男がどうしても気になった。こんな時間に灯篭に行くなんて、何か理由があるのだろう。佐藤は話しかけるべきか悩んでいた。

その時、男が口を開いた。

「こんな時間にすみませんね」

「いえ、仕事ですからお気になさらずに」

「灯篭まではどれくらいかかりますか?」

「この道は雪道ですから、30分もあれば着きます」

「そうですか」

男は窓の外を眺めながらぼそりと呟いた。

「この時間に灯篭に何か用事でも?」

思い切って訊ねてみるか、佐藤は迷った。

男は無言のまま、視線を外したままだ。

「申し訳ありません。余計なことを訊いてしまいました」と佐藤は謝った。

車内はしばらく沈黙が続いた。男はため息をつき、やがて口を開いた。

「実は、先月、息子が亡くなりましてね。その場所が灯篭だったんですよ」

男の言葉に佐藤は驚いた。彼は続けて話し出した。

「息子はとても優しい子でした。明るくて、友達も多くて、大学にも進学したんです。でも、私はその子の心の中を理解できなかった」

男の声は次第に絞り出すようになった。

佐藤は言葉を返せなかった。ああ、この男は灯篭に向かって息子の後を追うつもりなのだろう。そう思うと、何も言えなかった。

灯篭まであと10分ほどで、信号で止まった時、佐藤は冷静になる必要があると感じた。自分が運ぶ男は、間違いなく自殺しようとしている。罪悪感が手を汗まみれにさせた。

「戻りませんか?」と佐藤は思い切って言った。すると男は「あとどれくらいで着きますか?」と問いかけてきた。

男と目が合った。死の決意が浮かんだ目だった。何を言ってもこの男は自殺を止めないだろう。佐藤は言葉を飲み込み「あと10分程度です」とだけ返した。

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はじめまして、よろしくお願いします。

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