
中編
金縛りにしてほしかった話
匿名 3日前
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うになった時ですらこんなに死を感じなかった。
さっきまで驚きと恐怖と少しの好奇心で保たれていた脳内が一気に崩れた気分。
歯がガチガチ鳴る
体全体が震える
息が上手くできない
歯と衣擦れの音がとてつもなく大きい
仕損じた呼吸の音に咄嗟に口を覆いたくなる手を止める
動けば、音を出せばこちらを見るんじゃないか
恐怖しかない
歯を食いしばって体を全力で抑えながらただ見る事しかできなかった。
こんな時は金縛りになるのがセオリーだろ。
瞬きもできる、手も足も動く、喋ろうとすれば情けない声が漏れるだろうと確信できるくらいに体は自由だった。
動かせるけど動いちゃいけない、勝手に動くのを抑えられない体なら、一切動けない金縛りになりたいと切に願った。
何時間だったか数十分だったか
時間を確認する余裕なんてなかったし、目を逸らそうとする意識の変化すらそれの興味を引くんじゃないかと怖かった。
ふと、それの存在感が弱くなった。
このまま移動すると感じて最後まで目を離さずに耐える。
姿も存在感も消えたのはそれからそう長くなかったと思う。
恐怖の余韻からそのまま寝ることなんて出来ず、リビングの灯を煌々とつけて朝まで1人録画アニメ大会で凌いだ。
これのせいで記憶が地続きになって夢オチだと自分に言えなくなったのは痛手だったと少し後悔している。
そいつはこれ以降私の前には出てこない。
最後にそいつは消えたんじゃなくて移動した感じがするので、探し物でもあるんじゃないかと思う。
今もどこか彷徨っているんだろうか。
道すがらで勝手に宿にされた人達には同情する。
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