
長編
赤色の世界
匿名 2日前
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せ、戸を開いた。
困惑の気配を感じる。開いて、閉じて、見回している。
見えないはずだけど、私にはその様子が手に取るようにわかるのだ。
私は初めて、両親に感謝した。
少ししたあと、彼は教室中を歩き回り探している様子だった。
最後には用具箱に道具を戻し、無言でただ立っていた。
まずい。このままでは気配で悟られる。
私は深く、息を細く吸い込み、意識を閉じた。
目覚めたとき、赤い世界も彼もおらず、暗く冷たい夜に包まれていた。
月もない、空もない、ただただ黒く、黒すらなく、影すらない。
夜の教室の中で、何故か緑色の灯りだけが廊下を照らしていた。
鈴をかき鳴らしたかのような音がする。これは、耳鳴りのようだけど、何かが違う。
何かが、いる。
黒い、人影のような物が動いている。
見ているだけで、何かが失われていくような感覚を味わう。
ノイズのようでいて、暗い穴のようでいて、けれどそこにある何かがいた。
鏡を出入りしている。
私は息を潜め、ただただ外へと逃げることを決めた。
三階の階段に行かなければならない。
行く途中、すれ違いはしたが、キチガイのような逝った顔をしてただ通り過ぎた。
演じることは、私の役目だから、出来る。
私の顔を覗き込んでいる。
ただただ、終点を合わせず、よだれを垂らし続けた。
通り過ぎた。
走れ。走れ。走れ。階段の踊り場だ。
駆け下りた。
左腕を手すりにあてがわせ滑り落ちるかのように駆け下り、壁に身体をぶつけ反発力で向きを変えまた降り続けた。
幸運だったのは、上履きではなく運動靴であったこと。
夏場に青いジャンバーを腰に巻いて着てきたことだった。
二階
一階
寒い、まるで、真冬のような、それとも違う、風のない冷蔵庫のような冷たさだった。
黒い校門へ走り抜ける途中、後ろを振り返った。
何も無い。
黒い闇だけが迫っている。
静かに、穏やかに、けれど確実に黒色が広がっている。
ハチノスケがある。
誰が作ったかもわからないが、子どもたちを見守る遊べる遊具のような巨大な石像だ。
ふと、唐突に思い出した。
木に登る前、たしかハチノスケの穴を通っていた。そして、世界は静かで赤かった。
直感に従い穴を抜け、校門を乗り越えた。
街灯が光っている。風が、吹いている。
だけど、まだ何かが変だ。
追ってきている。
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- あなたは自◯したのになんでここに書いてるんですか?だしじる。
- ??????1
- ?あー