
長編
“見送った人”
ぼろぼろ 2017年3月29日
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これは私が小学3年生の時の話です。
いつも4人で登下校していました。
Aちゃん、Bちゃん、Cちゃんと私の4人です。
Bちゃん、Cちゃんとは途中で別れるのですが
Aちゃんは近所だったので家の近くまでは一緒でした。
Aちゃんが風邪で学校を休んだ ある日の事、
Bちゃん、Cちゃんと3人で下校したのですが
二人とは別れ私一人になった時、交通事故を
目撃してしまったのです。
車が急ブレーキをかける音に続いて
ドンっと鈍い音がしたので 音のした方を見ると
車が斜めに傾いて止まっていて、スーツを着た男性が
空中から落ちて中央分離帯に叩き付けられるように
落下したのです。
あちこちから悲鳴が上がりました。
私は脚が すくみ、動けなくなっていました。
呼吸をしているのかいないのかも分からない
ような状態で、瞬きもしているのかいないのか…
まるで、時間が止まってしまったように
体の動きも止まってしまったような状態でした。
倒れ込んでピクリともしない男性から
目が離せないでいると、男性の頭部から
血が流れ出ているのが分かりました。
怖くて怖くて涙が溢れ出てきましたが、
体は動かせないまま、ただ男性を見ていました。
すると、信じられない事が起こったのです。
男の人が二人?…
地面に横たわっている男性の体から
男性の上半身が起き上がったのです。
更に驚いて益々、目が離せなくなりました。
今、自分が見ている事を理解しようという
気持ちが あったのかもしれません。
起き上がった上半身に続いて
下半身も浮き上がってきました。
男性は完全に二人になっていました。
完全に二人になってからは、宙に浮いている方の
男性は白っぽいモヤのようになって
上空へと上がっていき、やがて見えなくなりました。
「見えるんだね」
ふいに声をかけられ、その時、体が
動かせるようになっている事に
気付きました。
私に声をかけたのは、見知らぬ男性でした。
男性は微笑んでいるのに何故か とても
悲しそうでした。
私は、それまで体が動かせなかった
反動でも あるかのように、男性には
返事もせず一気に走り出しました。
家に着くと私は、滝のような涙を流し
大声で泣き叫びました。
涙も声も いつまでも止まりませんでした。
泣き叫ぶあまり、私は その場で吐いて
しまいました。
吐く事で やっと、徐々にですが
落ち着いてきました。
そして私は気絶するように そのまま
眠ってしまったのです。
目が覚めると両親も兄も祖母も
凄く心配しているのが分かりました。
私は帰ってから交通事故の事を
母と祖母に どのように話したのか
覚えていませんが、ニュースを見た
母と祖母は場所と時間からして
“この事故を目撃したんだ”
と察したようです。
後で分かったのですが、私は見知らぬ男性に
声をかけられた事は話していないようでした。
そして私は、その後も見知らぬ男性に声を
かけられた事だけは誰にも話しませんでした。
なんとなく、あの男性が事故の被害者のような
気がしたのです。
誰かに話す事で、被害者の男性に恨まれて
取り憑かれるんじゃないか、と勝手に
思い込んでいたのです。
月日は流れ、私は短大生になっていました。
よく当たると噂になっていた占い師さんに
友達と占ってもらう為に出向きました。
最初に友達が占ってもらい、私は二番手と
話がついていたのですが…
私達が部屋に入った途端、占いのオバちゃんが
私を見て、
「あなた、背負っているものが あるわね」
と言いました。
何の事か分からず、戸惑っていると
「それを悪い事だと勘違いもしているようだわ」
と。
その場の流れで、友達より先に
私が見てもらう事になりました。
オバちゃんは、
「誰にも言えず、ずーっと一人で抱えている事が
あるでしょ?」
と言いました。
誰にも言えず…
一人で抱えている事…
心当たりが あるとすれば、交通事故を
目撃した時の事。
見知らぬ男性に声をかけられた事です。
私は半信半疑ながら小学生の時に
交通事故を目撃した事を話しました。
オバちゃんは、黙って聞いていましたが、
「その時の事で まだ、誰にも
話してない事は無い?」
と言ったので、思い切って見知らぬ男性に
声をかけられた事を話しました。
オバちゃんは、
「そうそう、それだわ」
と言いました。
私は、その見知らぬ男性が被害者の
男性だったのでは? と思っていた事、
そして、その事を人に話すと何か、
良くない事が起きるんじゃないかと思い、
家族にも言えなかった事を話しました。
「そう。怖かったわね。一人で抱えてたんだもんね」
そう言われて私は思わず、泣いてしまいました。
以下は オバちゃんの言葉です。
「でもね、大丈夫だから。亡くなった男性は
あなたに感謝しているのよ」
「あなたは唯一、その男性を見送ってあげた人なの」
「彼の魂が上がっていく所を唯一、見届けて
あげたのね」
その場には私以外にも沢山の人が
見ていた事を私が言うと
「周りの人はね、ただ、驚きと興味で
見ていただけ」
「彼をちゃんと見送ったのは、あなただけなの」
「彼は それを分かっていたの。だから、あなたには
感謝しているのよ」
「もう、怖がらなくて いいの」
「彼は決して、あなたに災いなんて もたらさないから」
目の周りは やけに熱かったですが、
気持ちは凄く、楽になりました。
もっと早く オバちゃんに出会っていたら…
そして、それが縁で私は その後もオバちゃんに
色々と助けて頂くようになったのです。
その話は後日、また…
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