
長編
【実体験】男の子と夢
匿名 2020年8月26日
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(初めに、私が書くお話は全て実体験です。このお話について、何か情報が見つかることを願い筆をとった所存です。)
これは私が18歳の時に体験した話です。
私には4歳離れた姉が1人居り、私達姉妹は何かの波長が合うようにお互いに霊感が高まる時期が定期的にありました。
この現象が何かはよく分かっていません。ある日を境に姉妹揃って感じとるようになり、またある日を境に何も感じなくなるのです。
そしてその当時姉は霊感がとても強く、
同時に私も霊感が高まっており、何故か姉が視ていないものまで視えるようになっていました。
そんなある日の話です。
ある夜、姉が家に帰宅してきた時に開口一番に「また見てしまった」と言いながら、いつものように自分の部屋がある2階へと階段を登っていきました。
私は帰ってきた姉の後ろ姿が何となく気になって、階段を登り終える姉に目を向けました。
すると姉の後ろに、ぴったりとくっ付いて登る、小学低学年くらいの男の子が居るのを見てしまいました。実は家の中まで連れて帰って来ることは珍しくなく、最初こそ驚いたものの、実害も特になかったので私もまたか、としか思わなかったのですが……その男の子の服装が、とても印象に残ったのです。
男の子が身に付けていたのは、薄汚れて茶色くなり、ボロボロになった白い半袖の服と、紺色の格子柄のはいったモンペ姿。そしてボロボロの赤い肩掛けカバンを肩から下げていました。
(戦時中の……?)
男の子は消えそうなほど透けており、むしろ見えているというよりも消えかかっていると言った方が良いくらいでした。私達の住んでいる所は戦時中に亡くなった、身元不明の方々が葬られている無縁仏の多い地域ですが、戦時中の霊を視るのは初めてでした。
しかし気にしても仕方ないと、見なかった振りをして2階にある自分の部屋へ戻り、就寝しました。
その夜、夢を見ました。
……もっとも詳しく言うと、どうにも夢と言うよりは記憶……男の子の生前の記憶、と言う方が正しかったように思います。
それは夢というには、視覚も、嗅覚さえも分かるほど鮮明なものでした。
そこは古く、冷たくて暗いトンネルの中でした。自分の周りには同じように汚れたモンペ姿をして頭巾を被った女の人やお年寄り達が、壁が濡れ、湿気ていてカビくさく暗い中を、何も言わずにただひたすら、トンネルの中を歩いています。
もちろんトンネルに明かりなどはなく、数十メートル先の出口から見える月明かりだけを頼りに歩いていました。
(お腹……空いた)
ただ漠然とそう思いました。
私と言うより、彼がそう感じていました。
どうやら、私は彼の見たもの、感じたものをそのまま共感しているようでした。
彼は住んでいた所が空襲に襲われ、唯一の家族であった母親を亡くしていました。住んでいた地域のよく知らない生き残った人々と共に、トンネルを歩いていました。
彼は数日川の水以外口にしておらず、持っているものはお母さんが縫って作ってくれた、名前入りの何も入っていない赤い肩掛けカバンと、着ている服に靴だけです。
彼はまだ幼く、何をしたらいいのか、ここが何処なのか、どこに向かっているのかもよく分かって居ませんでした。
ただひたすらに空腹に耐えながらも、母親から貰った大事なカバンを無くさないように紐を握って歩いていました。
トンネルは幅50メートル程度、長さは200メートル位だと思いますが、男の子の周りにはたくさんの人が囲んでおり、正確な大きさや道の先は見えていませんでした。もっと小さかったのかも知れません。
そうして多分トンネルの真ん中を超えた辺りでしょうか、突然前の方から大きな女の人の悲鳴と男の人の怒号が聞こえました。
「逃げろ!」
しかし、トンネルは人で埋めつくされており、何が起こったのかもよく分かりません。男の子は本能的に後ろに逃げようとしますが、後ろも人がつっかえており、逃げようとする人と聞こえていない人達がぶつかり合い、男の子は身動きが取れない状態でした。
すると、前の方から悲鳴と共に大きな地響きがなり始めました。さらに悲鳴が大きくなり後ろに逃げようとする人達に潰されながら、彼は前の様子がたまたま隙間から見えたのです。
彼が最後に見たのは、目指していたトンネルの出口が左側から大きく崩れて、人ともに泥になって潰れていく様子でした。
それはどんどん近づいて……とうとう自分達の目の前に来た瞬間、視界が真っ暗になりました。
そこまで見た時、私は飛び起きました。
私は起きた瞬間、とてつもなく悲しみに襲われて泣きだしました。
私は起きた瞬間に、はっきりと悟りました。きっと彼は、誰かに知って欲しかったのだと。トンネルでひっそりと消えたこの記憶のことを。
私は再度何か起こらないかと再び眠りにつきましたが、あれから何も起こらず、朝になると男の子も消えていました。
その後、戦時中のトンネル事故について調べましたが、もちろん文献などが残っているはずも無く、真相は謎のままです。
あの男の子はそれから二度と現れませんでした。私は向こう側で、母親と再会できていることを祈るばかりです。
怖いかどうか、は別にして、
これは私が体験した話の1つです。
後日談:
- 実体験①
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