
長編
見えないお友達
しの 2018年4月19日
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私は19才で結婚し、20歳で一人目の娘を出産しました。
親友のMはその頃、例のリアルお化け屋敷の様なアパートで毎日女の霊とバトルを繰り広げて居ましたが、旦那さんの浮気が発覚して離婚。アパートを出て実家に戻り、夜の仕事をしながら一人娘を育てていました。
これは、私の娘が5歳になった頃のお話です。
私が結婚して引っ越したアパートも以前Mが住んでいたアパート同様同じ造りのアパートが二棟並んで建ち、私の住んでいる棟の向かいには大屋さんの一軒家、もう一棟の向かいには茶色いレンガ造りの二階建てのマンションが建って居て、こちらのマンションも二棟のアパートと同じく一軒家に住む大屋さんの管理するマンションでした。
夏のある日の午後、Mから私の携帯に着信が有り、今日は娘が旦那の方へ泊まりに行くので一人だから遊びに行って良いか?と言う内容の電話でした。
専業主婦だった私は、娘と二人で暇だったので即OKしました。
私の当時住んでいたアパートはMの実家からは電車で一駅、駅からバスで10分位の距離でした。
娘と二人待っていると、やがてMがコンビニで調達して来たお菓子やジュースを持ってやって来ました。
娘はMに懷いて居たので喜んでMを出迎えました。
M「おぉ~!R!久し振り!又、ちょっと大きくなったな!」
R「Mちゃーん!いらっしゃい!」
M「はい!お菓子とジュース!」
R「やったぁー!ありがとー!」
M「よう!S!元気だったか?」
私「あぁ。久し振りやな」
20代になった私達はお互いに結婚して、実家を出たりで10代の頃よりは頻繁に会っては居なかったので、この時会ったのも数ヶ月振りでした。
M「どうよ?変わりなくやってるか?」
私「うん。でも…最近ちょっと気になってる事があってさ…」
M「何だよ?笑まさか、お前の旦那も浮気か?笑笑」
私「ちゃうわ!実は…Rの事なんやけどな…」
私は少し声のトーンを落としてMに言いました。
RはMから貰ったお菓子を食べながら大好きなテレビアニメに夢中です。
M「R?Rがどうしたん?」
私「最近さぁ、近所に友達が出来たらしいんやけど、私一度もその子の姿見た事無いんだよ」
M「見た事無い?いつも何処で遊んでるん?」
私「その子の家の方」
M「その子の家は何処?」
私「ベランダから見えるよ」
私達はベランダに出ました。
私「ほら!あの家」
その家は、茶色いレンガ造りのマンションの隣に有り、ベランダからその家の庭と家の一部が見える感じでした。
M「鳥居があるな」
私「うん。なんか気味悪くて私は行った事無いけど」
その家の庭には赤い小さな鳥居が有り、お稲荷さんを祀って居る様でした。
M「Rは毎日行くのか?」
私「殆んど。幼稚園から帰って来たら行く。って感じ。まぁ~、一時間位で帰って来るんやけど」
M「今日は?」
私「今日はお前が来る。って話してたから行って無い」
M「その子、いくつ?」
私「Rの話では小2らしい」
M「ふ~ん。男の子だな」
私「何で知ってるん!!」
M「勘だな」
(又、始まったよ。久し振りに会っても変わらん勘の鋭さ)
M「確か、I(私の旦那)も霊感強かったよな?」
私「え?あぁ」
私の旦那は私の一歳年下で解体屋の息子。M同様子供の頃から霊感が強かったのです。
M「遺伝だな」
私「ん?霊感って遺伝するんか?」
M「多分な。私も、お母のが遺伝したんだと思う」
私「でも、妹のAには無いやん」
M「あれは親父に似たんだろ」
私「それと、Rの友達の話と何の関係あんねん」
M「まだ解らない」
そんな、やり取りを私達がベランダでしていると、Rがやって来て
R「ママ!H君のお家行って来る!」
私「又行くん?」
Mは私を肘で突いて、Rに
M「R。そのお友達はH君って言うんだ?ママから聞いたけど、毎日遊ぶ位仲良しならMも会ってみたいな。連れておいでよ!」
R「H君、いっつも僕のお家で遊ぼう。って言うからなぁ~。聞いてみる!」
M「うん。お菓子とジュースあるから連れておいで」
っと言い、Rを送り出しました。
M「さて。様子見だな」
私「様子見?」
M「まぁ~、Rが連れて来れば解るさ」
私「一度も今まで連れて来た事無いねんで?来るかな」
M「来る」
(何を根拠に…。エライ自信やな)
それから15分程した頃ベランダの方から
R「Mちゃーん!H君連れて来たよー!」
ちなみに私の部屋は一階です。
M「ほら!来た笑」
Mと私はベランダに出ました。
すると…
Rの左手は誰かと手を繋いで居る様な形で握られて居るのですが、私にはその手を繋いで居る相手が…見えません。
M「H君?何歳?」
MにはRが手を繋ぐ相手が見えて居る様です。
M「そうなんだ!Rと一緒に入っておいでよ!よ!お菓子とジュースあるよ!」
M「なんで?」
M「そうなの?なら、車に気を付けるんだよ」
(おいおい!さっきから何、一人で喋ってるんだよ!)
R「Mちゃん!これっ!H君に貰ったのー!」
M「何?見せて?」
RがMに手渡したのはH君から貰ったと言う、ピンクの紐が付いた綺麗な鈴でした。
M「R?遊んでる時に無くしちゃったら困るからMがこれ、預かっておいてあげるよ!」
R「うん!じゃ、遊んで来る!」
M「車に気を付けるんだよ!H君のお家から飛び出しちゃ駄目だよ!」
二人??は又、H君の家の方へ走って行きました。手を繋いだ形で。
M「これ。今直ぐ捨てろ」
Mが渡して来たのは、RがH君から貰ったと言う鈴。
私「そんな事したら、Rが帰って来て大騒ぎになるやろ?」
M「ならない」
私「何で、言い切れんねん」
M「覚えてないから」
私「覚えてない?」
M「あぁ。帰って来たら忘れてるよ」
私「何で?」
M「そうしたから」
私「は??」
Mは10代の頃よりも更に霊感がパワーアップして居たので、ちょっとした霊とかならば祓う位の力も付けて居たのです。
私「あのさ…さっき一人で喋ってただろ?んでさ、R誰かと手を繋いでるみたいな感じだったけど」
M「見えなかっんだ?私にはちゃんと見えてたよ。可愛い顔した男の子。Rと手を繋いでた。一人で喋ってたんじゃ無くて、H君と話してたんだよ」
私「H君居たん!?何を喋ってたん?」
さっき私がMが一人で喋って居た様に見えて居た時…MはH君と会話して居たのです。
M「H君?何歳?」
H(7歳…)
M「そうなんだ!Rと一緒に入っておいでよ!お菓子とジュースあるよ!」
H(要らない…)
M「なんで?」
H(僕…入れないから…)
M「そうなの?なら、車に気を付けるんだよ?」
H(おばちゃん…全部知ってるんだ…)
っと…言う会話を。
私「僕入れない?」
M「うん。入りたいけど、この部屋には入れない。私もIも多少の者を祓う力が有るから」
私「全部知ってるんだ?って?」
M「僕が、生きてない事も何で死んだのかも全部知ってるんだ?って意味だろうな」
私「何で死んだのかも…」
M「H君は、自分の家の前で車に跳ねられて死んだんだ」
私「あっ!だから、さっきRに(H君のお家から飛び出しちゃ駄目だよ!)って言うたんか?」
M「そう」
私「R大丈夫かな!!」
M「大丈夫。ちゃんと帰って来る」
私「ホンマに??」
M「あぁ。鈴、捨てたからな」
私「あの鈴なんなん?」
M「H君はいずれRを一緒に連れて行くつもりだったんだろうな。今日、初めて一緒に家の前まで来たのは、Sしか家に居ないと思ったから。お前には自分の姿が見えて居ない事もあの子は解って居たはず。あの鈴はRを霊界に誘う為にH君がRに渡したんだ。けど、私が居た。(おばちゃん…全部知ってるんだ…)って言葉はRを連れて行くのを諦めたから言ったんだよ。だから、ちゃんとRは帰って来る。心の中で脅しといたし」
私「ん??」
M「SにもRにも聞こえない様に心の中でH君に、(Rは連れて行かせない。寂しいからって友達を連れて行ってはいけない。もし、Rを連れて行くつもりならあの世に行けない様にするよ)
って言った。霊にとって上に上がれない程苦しい事は無いんだ。上に行けなきゃ悪霊になるしかない。(お父さんともお母さんとも二度と会えなくなるよ。良いの?)って言ったら(分かった…)って言ったから」
私「貴女、一体何者ですか?」
M「ただの、貴女の友達ですが笑」
暫くして、Rが帰って来ました。
Mの言う通り、H君から貰った鈴の話は一切しませんでした。
ただ…寂しそうに
R「H君、明日お引っ越しするんだって。だから、もう遊べないんだって」
Mは私の顔を見てニヤッと笑うと、Rに
M「又、直ぐ仲良しのお友達出来るよ!今度は幼稚園でね笑」
R「うん!」
その夜Mは泊まり、翌朝私とRを幼稚園に送ってから帰って行きました。
Mの言った通り、Rはその後一切H君の話をしなくなりました。
勿論、H君の家の方に遊びに行く事も有りませんでした。
本当に…
H君の事を忘れてしまったかの様に…
いいえ。
H君が、始めから存在しなかったかの様に…
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