
長編
残された廃屋の浴室
匿名 3日前
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の母親の、女児に対する目つきが鋭くなった。
それから一週間ほど経った頃、女児の両親は地区の集会に出かけた。家では女児が一人で留守番をしていた。都会では小学校低学年の女児が、一人で留守番をすることはあまりないと思うが、田舎では珍しくなかった。
3時間ほど経って両親が帰宅すると、娘の姿が見当たらない。居間にも寝室にも納屋にもいない。もしや、と思い、浴室を見てみると、水を張った浴槽の中でぐったりしていた。
「何でこんなことに!?」と、両親は悲嘆に暮れた。死因は溺死だった。
両親は、自分たちが留守の間に、娘が浴槽に水を溜めることは一度もなかったし、そもそも浴槽で溺死するような年齢でもない、と、死因に疑問を抱いていた。
それから時は流れ、やがて三軒は廃屋になった。
そんなある日、2人の廃墟マニアが夜中、この廃屋を訪ねた。三軒の内、一軒は家財道具等が残って生活感があり、下駄箱の上には黒電話が置かれたままだった。
建物内に入り、色々と見て回っていると、いきなり黒電話が鳴った。
「マジかよ?」と二人は顔を見合わせたが、物怖じしない一人の方が電話に出てみた。
すると最初は何も声や音は聞こえなかったが、その内、何かゴボゴボするような音が聞こえてきた。
「何か水の音がする。」と言いながら、そのまま聞き続けると、水の音に混じって、微かに子供のような声も聞こえてきた。
「・・・けて・・・すけて・・・」
やがてその声ははっきり聞き取れた。「助けて」
それを聞いた途端、男は受話器を投げ捨て、もう一人と共に一目散に逃げ帰った。
車に戻ると急いでエンジンをかけ、発進したが、その瞬間、激しい衝撃があった。後ろから大型トラックに追突されたのだ。その反動で車は脇の崖に激突、フロント部が大破した。二人も怪我を負った。
そこに一台の軽トラが通りかかり、彼らを救出した。それがこの話を聞かせてくれた中学生の祖父だった。
その後、廃屋群は豪雨等で崩れると国道に落下する可能性があるため、危険だということで取り壊されることになった。が、一軒だけはどうしても撤去できない箇所があった。全てを取り壊そうとすると作業員が怪我をしたり、道具が壊れたりする。そしてやむなく、その箇所は残された。それが浴室だったのだ。
この話は、男子中学生から聞いた時点ではここまで詳細は分からなかったが、その後、祖父宅の場所を聞き、訪ねた。そこは何とその二週間前に偶然訪れた家だ
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