
長編
謎の多い公衆電話
匿名 3日前
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った。
今更だが、その霊園の近くの道は恐ろしく車や人の気配がなく、静まり返っていることに気付く。
時間は夜中、田舎の山道。
山の中というのは想像する以上に暗い。
公衆電話の蛍光灯だけが周りを照らす唯一の光だ。
規則的な音が妙に大きく聞こえる。
逆説的だが、公衆電話の大きい音が却って静寂を気付かせた。
リーん
急かすように公衆電話は鳴り続け、僕たちも誰かがこの電話に出なければならないのでは? と思い始めた。
今になって考えると、あの時逃げ出せば良かったと思う。
しかしそのときの僕たちは、肝試し的な感覚で、電話が鳴ったら出なくてはならないという思いに捕らわれていた。
「なあ。お前出ろよ」
「いや、お前こそ」
みんなでビクビクしながらそんなことを繰り返していた。
公衆電話の音は鳴り止まない。
「じゃあ俺、出るよ」
僕たちの中でリーダー格だった丸井が言い出した。
おっかなびっくり電話に近づき、扉を開けた。
知らない人もいるかもしれないが、公衆電話ボックスは大体が一人しか入れない。
バリアフリー目的の広々としたものは、あまりこういう場所には設置されていない。
ぎゅうぎゅうになりながらも僕たちは中に入ろうとすし詰めになる。
一人になるのが怖かったんだと思う。
少なくとも僕はそうだった。
扉を開け放し、丸井は僕たちにも聞こえるように受話器を取った。
「………………………………み……」
何かを喋っているのか。
わからないが、聞き取り辛い。
しかし、相手がいることは分かる。
何かを繰り返して言っているようだ。
「……か…………あ……と…………み……」
か・あ・と・み
ずっとこれを繰り返している。
そのうちに電話が切れてしまった。
「最初は怖かったけど、何か拍子抜けしたなあ」
丸井はそう言って、受話器を置いた。
僕も強がりから、面白いネタできたなあ、とか何とか言っていた。
翌日にはみんなそのことを忘れていた。
またいつものようにコンビニに集まり、「何か面白いことない?」と言い合っていた。
さらに二日後。
丸井が死んだ。
僕たちはあまりに突然のことに、わけが分からなくなった。
通夜、告別式が終わっても僕たちは一言も喋れなかった。
丸井の兄が、「君たちの事はよく聞いていたよ、今まで仲良くしてくれてありがとう」と言った時に初めて涙が出た。
僕たちは、コンビニではなくファミレスで話をした。
この怖い話はどうでしたか?
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- すごく面白かったり!ありがとう!太郎
- 凄く怖いかったです。あまり文章が長いからもう少しだけ短い文章をして欲しいと思っています。?
- もう一つは天満屋かな?あ
- マルイ、高島屋、伊勢丹…???このや
- 久しぶりの秀作を読んだタク