
禁足地に足を踏み入れてしまった若者の物語は、数日後に始まる。夜勤のシフトが終わり、彼は疲れた体を引きずりながら工場を後にした。外は冷たい冬の夜、工場の敷地を出ると、彼は車へと向かった。自宅までは車で30分、長い一日がやっと終わるところだ。
赤信号で停まった時、彼は車のライトを点けた。瞬間、目の前に現れたのは、黒い影だった。まるで闇の中から伸びてきたようなその人型の影は、最初は彼の存在に気付いていないかのように、無表情で横を向いていた。
心の中で祈るように願った。「去ってくれ…」。だが、その願いは通じなかった。影の頭がゆっくりと動き、彼に向き直る。彼はその瞬間、恐怖に凍りつく。
目の部分に二つの切れ目が入った。切れ目が上下に開き、異様な目が現れた。人間の目ではない、それは爬虫類のように冷たい瞳孔を持っていた。冷たい視線が彼の心を貫いた。
「ミ…ツ…ケ…タ」と、影が口を動かしているのを見て、彼は背筋が凍る。再び、彼の視界を遮ったのは後続車のクラクションだった。彼は我に返り、慌てて前方に目を向けた。しかし、影は消えていた。
その夜、彼は恐怖から逃れようと必死になりながらも、よく眠れなかった。トイレに起きた際、廊下の電灯が点いているのに気付く。自分以外に誰もいないはずなのに、何故? 彼は不安になり、電灯を消す。
だが、コート掛けの影が人の形に見えたことで、再びぞくりとした。再度電灯を点けて確認すると、影は確かに自分のコートだったと安堵した。しかし、ふとした瞬間、もう一つの影が見えた気がした。彼は目を凝らすが、何もない。錯覚だろうか?
その後、夜勤が始まった。巡回中、昨夜の出来事を思い出しながら、彼は同僚と共に工場内を歩いた。暗闇の中、彼は再び冷たい気配を感じた。振り返ると、カウンターの向こう側に黒い影が笑っていた。彼は叫び声を上げ、同僚を驚かせるが、そこには何もなかった。
その影は、彼の近くにいつもいる。耳元で囁く声が聞こえる。それは叫びではなく、怒りと恨みの声だ。いつでも、どこにいても、彼はその声に悩まされ続ける。多くの時間が流れ、彼は次第に体調を崩し、仕事にも支障が出始める。
ある日、彼は工場の休憩室で過去の写真を見つけた。その中で、彼だけが真っ黒に映っていた。まるで極太のマジックで塗り潰されたように。彼は自分の運命を呪い始める。
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