
中編
愛されたかった人形
匿名 2022年1月4日
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これは数年前、私が実際に体験した恐怖体験です。
ある日、私は何気なく訪れた近所のブックオフで売りに出されている一体の人形を見かけました。
日に焼けて色が抜けた髪、全体的にどこかくたびれた感じのある、いまいちパッとしない女の子の人形でした。
それまで私は人形というものにあまり興味がありませんでした。ですか何故かその時はその人形のことがどうしても気になったのです。
その晩家に帰ってからも人形のことが忘れられなかった私は、週末にお小遣いを持ってその人形を買いに行きました。
私の手元に来た人形は、初めて出会った時よりもずっとずっと可愛らしく見えました。
いっぺんに人形を気に入った私は、汚れを落としてやり新しい服を作って着せてあげました。しばらくの間私はその人形をとても可愛がっていました。
その頃、私は引っ越したばかりで新居は綺麗でそれなりに快適でしたが、1つだけ困ったことがありました。
それは夜中になると家の中を誰かが歩き回るのです。
毎晩の金縛りと気味の悪い足音が怖くて、私は引っ越してからというもの全然落ち着いて眠れませんでした。
近所の人たちは皆親切でしたが、以前この家に住んでいた人がどういった人なのか、どうして引っ越したのかについては誰も教えてくれませんでした。
連日の怪奇現象に耐えかねた私は人形にこう言いました。
「お願い、夜中に家の中を歩き回ってる人を追い払って。怖くて眠れないの」
その晩から怪奇現象はだんだんと減っていき、遂にはピタリと止みました。
しばらくはその人形をとても可愛がっていた私ですが、だんだんと飽きがきていました。
ある日私は学校から帰った私。その日はとにかく嫌なことがあって無性にイライラしていました。
そして、あろうことか人形にこう言い放ったのです。
「あなたなんて、買わなければよかった!服を作ってあげたのも世話をしたのも全て時間の無駄だった。」
人形の顔がふと暗くなった気がしました。
私としては八つ当たりのようなつもりであって、本気でそう思っていた訳ではなかったのです。
人形もそのことをわかってくれているだろう、どこかそう思っていました。
その晩、なかなか寝付けなかった私は昼間のことを思い出して少しだけ後悔しました。酷いことを言ったな…
「人形相手でも何言ってもいい訳じゃなないんだな…」
そう独り言を呟いたその時、
布団の脇に人の気配を感じたのです。
見ると、一人の痩せた女の子が黙ったまま立って、こちらをじーっと見ていました。
日に焼けた髪で、私があの人形に作った服を着ていました。
怖さを通り越し、私の頭は完全に思考を停止して、目を見開いたまま息をするのも忘れて私は布団の中で固まっていました。
次の日、気味が悪くなった私は人形を押入れに仕舞い込みました。
もう忘れようと思いました。
ある年末に押入れの整理をした時、人形の頭だけがごろりと落ちてきました。
私は心のなかでごめんね、と呟きながら他の不用品と共にビニール袋へ入れました。
それから、我が家では怪奇現象は起きていません。
体のほうは、押入れの済まで探しても見つかりませんでした。
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