
長編
おねえちゃん
匿名 2日前
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おねえちゃん。
私は最近、この言葉に敏感になってしまった。
妹の晴花が交通事故で死んでから、もう一年経った。塞ぎ込んで私に八つ当たりしていた義母は、
だいぶ精神も安定して来ている。
一応、我が家は平和だ。
…………………………私以外は。
私の母親は、私が中学生になって間もなく家を出て行った。
原因は父の不倫だ。
新しく来た母親はそれこそシンデレラの継母かと思うくらい意地悪な人だった。
物を隠したり壊したりは日常茶飯事、機嫌が悪い時には殴られる事もある。
私は徐々に精神を病む様になった。
その義母の連れ子で当時小学三年生の義妹の名は晴花。当時四歳だった。
義母は晴花ばかりを贔屓し、私は家族の中に居場所がない。
段々と友達の家を泊まり歩く様になり、言葉遣いも乱暴になって行った。
ある日、私は義母に晴花のお守りを頼まれて嫌々散歩に連れて行く事にした。
面倒くさかったが、義母の機嫌を損ねるとそれはそれでまた面倒くさい事になるのでとりあえず
引き受けた。
途中、コンビニに寄りアイスクリームを選んでいる晴花を見ている内、何故だか殺意が浮かんだ。
何でこいつばっかり幸せになりやがって…………
勿論してはいけない事だと分かっていた。
分かってはいたのに溢れ出て来る殺意を止める事は出来なかった。
エアコンの効いたコンビニの中にいる筈なのに、何故か身体がとても熱い。
その身体から吹き出す熱さについても理解していた。
知らず知らずの内に溜め込んでいた負の感情が、
マグマの様に吹き出している。
「ねぇ晴花、後で玩具買ってあげよっか?」
「いいの?お姉ちゃん大好きー!」
側から見れば仲の良い姉妹に見えるだろう。
晴花お気に入りの玩具屋は、交通事故が多発している道路に面している。
だから、晴花が勝手に飛び出した事にすれば、私は責任を追及されずに済む。
しかも好都合な事に、あの玩具屋の近くは人通りが少ない。
見つかる確率はかなり低いだろう。
コンビニで会計を済ませて玩具屋に向かう途中、
何故か嫌気がさした。
人を殺す、と言う事に対するものだ。
散々悩んだが、結論を出す前に玩具屋の前の道路に辿り着いてしまった。
どうしよう。
どうしよう。
どうしよう。
どうしよう。
今ここで殺さなければ、あの地獄の日々が続くだけだ。
でも半分とは言え血が繋がっている妹を殺す事は出来ない。
そんな正反対の思いを抱えたまま、私は道路に
踏み出した。
幸
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