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長編

夏の夜の体験

ひろ 2019年7月26日
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霊をたまに見るようになってから一年余り。 中学生のころの話です。 またまた長くなってしまいましたので、お時間ある方だけお読みくださいませ。 夏休みでした。 私たちはその夜、友人たち数名と近所の小学校のグラウンドで花火をしていました。 田舎でしたので小学校の周囲は人家や商店がちらほらある程度で、人気はありませんでした。 時刻は22時ごろ。 仲間たちと楽しくはしゃいで花火をしていましたが、私はちょっと前から気になっていることがありました。 グラウンドのフェンス越しに、じーっとこちらを見ている小学生が二人いたのです。 こんな時間なのに通学帽とランドセルを身に着け、小学校高学年ぐらいの女の子と低学年ぐらいの男の子でした。姉弟のように見えました。 嫌だな・・あの子たち、きっとあっち側の人だよな・・。 私は花火をしながらもずっと視界の隅に彼らの姿が入っていました。 何をするわけでもなく、ただ、花火をしている私たちのことをじーっと見ているのです。 半分あれは生きている人間ではないと思いつつも、もし本物の人間だったら親御さんが心配しているだろうし、私はしばらく迷った挙句、近くの友人に声をかけました。 「あの子たち、さっきからずっと俺たちのこと見てるけど、こんな時間に大丈夫なのかね」 「ん? 誰のこと?」 「ほら、あそこのフェンスの向こうに小学生の姉弟がいるでしょ」 「いねーし。やめろよそういう話~」 ・・・・・やっぱり。 不思議とみんなには見えないのです。 私は特に怖い感じもしなかったので、それきり姉弟のことは視界から締め出し、仲間たちと花火を楽しんで帰りました。 その夜は、私だけその小学校の近くに住んでいた友人Aの家に泊まりに行きました。 Aとは特別仲が良かったのでさっきの姉弟のことを話すと、 「ああ、あの辺は昔から交通事故が多いんだ。もしかしたら関係あるかもね」 なるほど、と妙に納得したのを覚えています。 そしてその夜、Aの部屋で寝ているときのことです。 Aの部屋はロフトがあり、私とAはそこに並んで布団を敷いて寝ていました。 ふと金縛りに遭い、私は目が覚めました。 目だけは動きますが、それ以外はぴくりとも動けず、声も出せません。 すごく嫌な感じでした。隣でAが寝ているのは分かりますが、顔が動かせないので彼の様子も見られません。 すると・・・ ガタ、ゴトン・・・ ゴトン・・・ ガタガタガタ・・・ ガタン! と、ロフトの下から、まるで家具を動かしているような音が聞こえてきました。 ゾゾッと悪寒がはしります。 ゴト、ゴト・・・・ ガタン・・・・・・・・・・・・ しばらくして物音が止みました。 すると突然、 「わははははははははははははははははははははははは!」 耳元で何者かが笑い出したのです。 ゾッとして、私は目をぎゅっと瞑りました。 「わはっははははっはっはっはははははっはっははは!」 声の様子では壮年期の男性です。 やめてくれーーと心の中で叫んでいると、 「うふふふふっふうふふふふふふ」 「きゃはははっははははは」 「あっはははははははは」 「うひひひひひひいひひひひ~」 「わはははははははははは!」 どんどん色々な笑い声が増えていったのです。 近ければ耳元で、遠いと数メートルも十数メートルも向こうの方から聞こえている感じでした。 とにかく何十人もの人々の笑い声が私を包んだのです。 全身冷や汗です。鼓動はバクバクです。 そして突然体がぎゅっと押さえつけられたように重たくなりました。 何かが胸の上に乗っているようにも、手で押されているようにも感じました。 私は絶対に目を開けませんでした。 そしてしばらく耐えていると、 「はははははははははははははははは!・・・・・・・・・わぁっ!!!!」 と一際大きい声を最後に、全ての笑い声がぴたりと止まり、体も軽くなりました。 そして金縛りも解けたのです。 心臓が激しく鳴っていました。 恐る恐る目を開けると、静かに眠っているAの姿と、何ら変わったところのないAの部屋がありました。 私は眠りにつくまで、それからしばらく時間がかかりました。 翌朝。 Aにそのことを話すと、なんと、 「・・・その笑い声、俺も聞いたことあるよ」 と言い出しました。 一体笑い声の主が何なのかは分かりませんでしたが、この後不思議なことがあったのです。 ある日Aが寝ていると、夢の中に死んだおじいちゃんが出てきたそうです。Aが大好きだったおじいちゃんで、いつもAのことをかわいがってくれていたそうです。 そのおじいちゃんが夢の中で、Aのことをぎゅっと抱きしめて、 「もう大丈夫だよ」 と一言告げ、消えていったそうなのです。 そしてこの夢を見た日から、あの笑い声は一切聞かなくなったという話です。 私が小学校で見た姉弟の霊?とAの家に出た笑い声の主は関係あるのかないのか。 おじいさんが笑い声の主を追い払ってくれたのか。 分からないことだらけですが、確かにあの夏の夜、私たちはそんな体験をしたのでした。

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